今夜あなたと図書室で【真波山岳】 (ページ7)

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何が分かるのページ7

今日は朝から調子が悪かった。それで突然あんなことがあって多分驚いたんだ。初めて過呼吸なんか起こして、寮に帰ってくるのはだいぶ遅くなってしまった。宮原さんは自宅生だけれど、私は両親が遠いので、病院に着いてきてくれて、途中まで送ってくれた。

真波くんには悪いことをした気がする。あれじゃあ真波くんのせいみたいじゃない。

「あとで、きちんと踊れない理由言えば大丈夫かな？薬のみ忘れてダメになったとか間抜けすぎて言いたくないけれど……」

そんなことを考えながら寮の玄関へ急いだ。
宮原さんと先生が外出届は出しておいてくれたけれど、部屋に行って休まないといけない。それなのに、玄関横のベンチに見覚えのある自転車とシルエットがいる。

宮原さんに、彼は自宅生だと聞いていたけれど。

「お帰り？」

「……ただいま？」

変なやりとりだなあと思って、あんなことがあった後なのにと思う。
話すのは3回目。だけど、なんだかずっと見てたから、そんな気はしなかった。

「そんな顔しないで？もう大丈夫だから」

そう言って彼の隣に座った。やっぱり、少しドキドキする。

「踊れない理由、話すから」

そう言って、昨年の怪我の話をした。怪我したから、無理だよ。そういう話だけで済ませたかった。それだけでも当然納得してくれるだろうと思っていた。

「でも、Aちゃん、手術したよね？」

だけど、返す刀で核心を貫かれた。

「先輩とかにいるから知ってるよ。前十字靱帯損傷。Aちゃんが言うように一生踊る気なんてないのなら手術する必要はない。先輩も手術したんだ。それで、いまも自転車に乗ってる。ねえ。」

それ以上言わないで。

「A」

お願い！

「踊りたいんだね？」

真波くんと初めて会ったあの日以来に、私は踊れなくなったことで涙を流した。
すごく……攻撃的な顔をしていたのではないかと思う。
踊れない原因は怪我にはないことを見抜かれていた。現に、外ならステップが踏めた。それ以前にも、本当は何度も簡単な練習に復帰しようとした。けれど、ダメだった。

「真波くんに……何が分かるの……」

ああ、ダメだ。八つ当たりだ。

「何も分からない。ただ、綺麗だと思ったから、観たかっただけだよ」

この男、なんて自分勝手なんだ。

「踊ってない私なんて無価値だって……踊ってない時に会った人に思われるなんて！」

「違う。オレは利己主義なんだ。やりたくないことはやりたくない。綺麗なものは観たい。キミも多分、そう」