綺麗じゃ、ない ページ6
委員長から水瀬Aちゃん、という名前が出てきたときは本当にびっくりした!
クラスも初めて知った。オレ、進学コースというのが違う棟にあるって知らなくて、同じ棟の総合コースでばかり探してた。
とにかくオレと委員長はお昼休みにAちゃんがいるクラスに行くことにした!
踊るとこ、見せてもらいたいし、いつにするとかどこにするとか決めなきゃ!
制服にスニーカーであんなに綺麗なんだし、絶対に凄いはず。
教室に入って、水瀬Aちゃん、いますか?と聞いてみる。
どうも違う教室に入ったみたいで、水瀬さんは隣のクラスだよ、と言われた。そのあと、その女の子の言葉にびっくりした!
「世界大会の強化選手だった水瀬さんってやっぱりF組の水瀬さんだよね?」
とオレらに聞いてきたんだ。いや、わかんないと返すと、「私、中学は弱小新体操部だったからびっくりしたよ!知ってるけど話しかけらんないの」なんて言う。こっちがびっくりだ。
急いでF組に行く。
入った瞬間ぞくりとした。
姿勢がちがう。存在感がちがった。観る者を意識せざるを得なかった人だけがきっと出せる雰囲気だった。
教室にはいろんな人がいたのにAちゃんだけが直ぐに目に入ってきて、本当はお昼を食べようって誘うつもりで、委員長にもそう言っていたのに、オレは全然違うことを言っていた。
「ねえ、踊ってるトコ、また見せて!」
「ちょっと、山岳!」
Aちゃんは、それを聞くやいなや嫌そうな顔をした。委員長はデリカシーがどうのこうのって言ってる。でもオレはそんなのちっとも気になんかならなかった。
「踊らないよ」
「だってすごく綺麗だったもん!ねえ、見せてよ!」
「……綺麗じゃ、ないよ」
そんなことを言われても全然わからない。だってあの日のAちゃんを見て、普段ならちっとも興味を持たないものが気になったのに。
「そんなことない!オレ、見たい。前に約束したよ!」
彼女の肩を両手で掴んで揺さぶる。下を向いてしまったから腕を掴んで立たせようとした。
「やめなさい!山岳!」
委員長にそう言われて、オレはようやく我に返る。
「……あ」
彼女の息が荒い、いや荒いどころではない、明らかにおかしかった。
「ぜんそく……?いや、過呼吸だわ!」
教室がざわめく。委員長が彼女を抱き締めて何かを言い聞かせるように話しかけている。真っ白になった彼女の腕がだらりと垂れた。
「オレ……」
「山岳は先生呼んできなさい!早く!」
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イヴ - 大人っぽいね〜こういうちょっと背伸びした小説、好きだよ♪それで、ちょっとアブナイ感じのが最大の好み♪♪主さんは? (2015年10月12日 1時) (レス) id: 50d5e2963d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まゆ記 | 作成日時:2014年9月8日 3時