今夜あなたと図書室で【真波山岳】 (ページ12)

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別れの日ページ12

※時間がかなり飛びます。
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オレたちは2年生の夏に、互いに約束を果たすことができた。
以前よりも酷く苦しい戦いではあった。それは彼女も同様だっただろう。彼女は靱帯の怪我というよりは、精神的なものや恐怖心を引きずっていたけれど、それらから解放された背中からは確かに見えるはずのないものが見えた。その日まで知らなかった。彼女はオレと同じだったのかもしれない。あの時、オレは登っていなかったけれど、２人が一つのものだったような錯覚さえ覚えた。いても立ってもいられなくなって、表彰式を見ずに、そもそも結果すら知らず、すぐに近くの坂を登りに行った。

最高の気分だった。
これってすごいことだ！特に顔を合わせてもいないけれど、充実感だけが身体に残ってふわふわしている不思議な感じだった。

そんな感じでいつも通り、ふわふわと自転車に乗っていたら、やけに動きやすそうな格好をした委員長と出くわした。普段はスカートが多いのに、どうも髪がまとまっていなくてジャージみたいな格好で、軍手まで持っていたらさすがのオレでも気にかかる。訊ねる前に委員長が口を開いた。

「山岳には今日まで言うなって言われてたけれど――」

委員長は今日、Aちゃんの引っ越しを手伝ったらしい。彼女は退寮し、東京の、あまり行かなくていい学校に編入が決まったと。
怪我を克服してインターハイで優勝し、ニュースなんかには奇跡とまで書かれていた。すごいねー！って電話をしたら、彼女は「断裂じゃなくて、損傷で奇跡とか、大げさ」と笑っていたけれど、無理に余裕があるような振る舞いをするのは彼女の性質だととっくに気づいていた。

実績を買われてまた強化選手に抜擢されて、その練習は箱根からだと難しそうにしていたのは知っていたけれど、こんなにすぐいなくなるなんて思わなかった。

携帯が震える。滅多に気づかないのに、その日はなんだかそういう予感がした。

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18：30、図書室へどうぞ～
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なにこれ。今日？そもそも図書室って夏休みのその時間は開いてるわけ？
寮生は学校のコンピュータルームを結構遅くまで使えて専用の出入り口もあると聞いたことがあった。
オレは葦木場さんの部屋に上がり込んで出入り口を探した。
葦木場さんが「一部屋に一つずつ出入り口なんてついてる？」って一緒に探し始めてしまったので、黒田さんが通りかかるまで出入り口は見つからなかった。ひどい！