不謹慎 ページ12
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文化祭の準備も着々と進んで、いよいよ当日まで日が近いんだな、ということを身にしみる、今日の放課後。
うちのクラスはお化け屋敷なので、幾分か他より早めに準備が終わりそうなのだが、カフェやら劇やらをやるクラスは準備しなければならないことが多いらしく、大変そうだった。
教室の隅で、当日の流れを確認していたら慌てた様子で私を見つけた。
「Aちゃん今暇だよね!?」
「う、うん。することはないし、」
「懐中電灯の電池が足りなくて、近くのコンビニまで買いに行って欲しいんだけど!」
お願いできるかな?なんて可愛い子に涙目で頼まれたらそれはもう勢いよく首を縦に振るしかない。
「あ!ヒラくんと一緒の方がいいよね!」
え?
なんて思うのも束の間、その子はヒラくんを呼んでいて、「はい、いってらっしゃい」と強制的に校外へとしめ出された。
ヒラくんはというと、突然のことに驚いてはいたがあっけらかんとして「じゃあ行こうか」と前を歩いてしまった。
…最近、前よりヒラくんと話さなくなった。
前は放課後も一緒だったし、何よりヒラくんから話しかけてくれることが多かったが、今はなぜか話しかけられない。
でも、それだけが理由じゃない、気がする。
*
少しの会話をして、
近くのコンビニで電池を買った。
さすがに不謹慎だと思い、帰路についている途中
私はその場で立ち止まった。
「…ヒラくん」
「なあに?」
ヒラくんはくるりとこちらを振り返る。
いつもと同じような表情を浮かべているが、
今はその“いつも”じゃない。
「最近あんまり話さなかったからさ、なんかあったのかなあって」
「あーそうだね」
私が言葉を濁しながら会話を切り出しても
ヒラくんは上の空で返事を聞き流す。
そしてヒラくんは、私の一歩先を行った。
私はそれを変に思って、ヒラくんの裾を掴みこちらを向かせた。
「ねえ、ヒラくん…!」
「、!」
振り向いたヒラくんは、今日
初めて私を瞳に写した。
刹那、私が見たことないくらいヒラくんの顔が歪んだ。悲しそう、ともとれるその顔は、私の瞳に酷く鮮明に焼き付いた。
「前からさ、気になってたんだ。
Aちゃんキヨのこと、好きなんじゃないの?そりゃあ、俺なんかより、キヨの方が断然いいよね。だって、俺だけ一方的で……」
そこまで言い終えたヒラくんはハッとして、レジ袋を全て持った後、
「ごめん、Aちゃん」
と走り去った。
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まちや。(プロフ) - おばけさん» ありがとうございます!!^^ (2019年2月27日 23時) (レス) id: e16223c2be (このIDを非表示/違反報告)
おばけ - めちゃおもろいです!更新応援してます! (2019年2月27日 16時) (レス) id: c7fac66308 (このIDを非表示/違反報告)
まちや。(プロフ) - スカイさん» スカイさんこちらにもコメントありがとうございます!!身に余る言葉ばかりで嬉しい限りです( ; ; )それと母のくだりが面白くてふふ、と笑ってしまいました(笑)とても励みになります、これからもよろしくお願いします! (2019年2月14日 5時) (レス) id: e16223c2be (このIDを非表示/違反報告)
スカイ(プロフ) - え、あの。好きです。←どうしたこいつ。 最初、ヒラさんだ〜。面白いのかな〜?と思い読んでみたら、なんということでしょう。作者様が神でした。面白過ぎて、1日で全シリーズ読んで仕舞いました(笑)←このあと母に怒られました。 更新気長に待ってます! (2019年2月13日 23時) (レス) id: bfb55ad556 (このIDを非表示/違反報告)
まちや。(プロフ) - リルさん» ありがとうございます!!とっても励みになります( ;∀;)神だなんてそんなことないです!( ˘ω˘ )これからもどうぞよろしくお願いします!! (2018年5月17日 7時) (レス) id: e16223c2be (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まちや | 作成日時:2018年5月3日 13時