【ヒ/ラ】恋バナしろよ。【実/況/者】

風は仰ぐ ページ1

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夏の暑さも段々と過ぎていって、
過ごしやすくなった今日のこの頃。

空を通り抜ける風は、少しの生温さを含んで
ぶわりと吹き抜ける。

日焼けで赤くなっている頰と腕は
最近は慣れてきた。


ぼんやりと、空を眺めながら
作業を終わらせていたら丁度笛が鳴り響いた。



「選手全員明日の試合に向け、今日は体を休めること！解散！」



顧問の先生の声が遠くで聞こえる。
ああ、そういえば明日試合だったっけ。

みんながバラバラに動き出して
私も遅れて荷物を取りに向かった。


あ、そういえば明日の試合、ヒラくんとフジくんが観に来るって言ってたっけ。

…あーあ、私も “そっち側” が良かったなぁ、なんて。こんなこと言っちゃいけないけど。

でもヒラくんの私服姿が見れるから、少し緊張してきた。眼鏡してくるかな、とか髪の型どんなだろう、とか。

そんな妄想を膨らませているところで、遠くから
私を呼ぶ声が聞こえてきた。



「おーい、A？聞こえてんのか？」

「………ん、なに？」



ハッと其方を見てみると、既にエナメルバッグを肩に掛けて私の顔を覗き込むキヨがいた。

支度はや、と言葉を付け足すとまーな！と自慢気に鼻を鳴らすキヨの方から制汗剤の爽やかな香りが漂ってきた。
さっきまで汗でぐっしょぐしょだったのにこんなに爽やかになるのは多分イケメン限定だからだろう。
服も練習Tシャツからジャージに着替えられているし、それをこの短時間でしてきたというのだからこれこそ早業だ。



「…明日の試合さ、俺、出るじゃん？」

「うん、そうだね、おめでとう」



三年生が引退してからの初めての公式の試合。
キヨは見事FWに選ばれた。

引退試合では惜しくも負けてしまったので、その屈辱を晴らしたいところ、って監督も言ってた。その期待はキヨにもしっかりと伝わってるみたい。



「……俺、お前が応援してくれれば、その、」

「え？勿論全力で応援するけど？」



チームで頑張ってきたんだし、と付け足すと、キヨは他に何か言いたそうに言葉を詰まらせたが「まあいいや」と笑って、またな！！と手を振って走って帰っていった。



「なんだったんだ？」



私はあまり気にせず、帰る支度を済ませるため
部室に入った。







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