浅沼家の日常８

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『晋さん？』


なかなか開けようとしない浅沼にAが声をかける


浅「あ、いや何でもない。じゃあいくよ…」


『うん』


浅「ところでさ、こんなに怖がってるところ…他の男の人に見せたことあるの？」


『っえ？？？』


ガシャン


『えっ…えぇ！？』


浅「はい、片方終わり〜。次は右耳ね」


『ちょ、待って！』


浅「ほらほら怖くないうちにやっちゃうよ〜」


突然のささやきとその内容に顔を真っ赤にさせる


どうやらいきなりのダブルパンチはかなり攻撃力があったようだ


未だに混乱状態のAをよそに浅沼は右耳にピアッサーを当てると


ガシャン


浅「よーし、これでOKかな。あとはケアをサボらずにやれば問題ないはずだよ」


『あ、うん。ありがとう』


浅「そこまで痛くなかったでしょ？」


『痛くはなかったけど、痛みを感じる暇がなかったというか…』


浅「なら良し！」


『“良し！”じゃなくて…！！』


さっきまでの怖がりようはどこへ行ったのか


今はあのささやきのことで頭がいっぱいのようだ


『さっきのはどういうことなの！？』


浅「そのまんまじゃん。あんなにプルプルしてるところを他の男に見せたことあるの？」


『……ある…けど』


浅「ふぅん？やっぱり元カレとか？Aは可愛いもんね」


目が笑っていないとはまさにこのこと


いつの間にかAの視界には浅沼と天井しか映らなくなっていた


『ちょっ、まだ昼間よ！？』


浅「なんかさっきのAを俺以外の男も見ていたと思うと妬けちゃうなぁ」


『お父さんと兄さんたちに嫉妬してどうするのよ！！！』


浅「…ん？」


ピタリと動きが止まった


そして、先ほどのAのようにだんだんと赤くなっていく


『それに私、今まで誰とも付き合ったことないんだから！！』


浅「え、マジで？」


『嘘ついてどうするの！』


一切の音が無くなった部屋の中


その部屋の中でAのすすり泣く音だけが響く


浅「あ、いや…本当にスミマセン」


『……今度ブランド物のピアス買ってもらうから』


浅「それはもちろん喜んで」


完全に立場が逆転した瞬間だった


浅沼は顔を背けて全く表情の見えないAにかなり焦った様子である


浅「あ、あのAさん？？」


『……なんてね』


浅「へ？」


『嫉妬してくれてちょっと嬉しかったわ』


浅「もぉぉぉぉぉぉ！超焦った！！」


どうやら一枚上手なのはAの方だったようだ

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