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おんぼろであまりにギシギシいうので足が床を突き抜けてしまうのではないかと心配していた中学の床とは違って、高校の床は綺麗なタイル張り。
静かすぎる滑りのよい廊下を、澪ちゃんと私で歩いていた。
「あの、澪ちゃん、その人にお礼言う時、一緒に来てね」
「ん?うん、いいよ。」
階段を上がって、右に進んだ二番目の教室がC組だった。HRでも、やっているのかな。
どうにも先生ひとりが教壇の上でペラペラ喋っている教室は入りにくい。
…ガラガラ
扉を開けると、一斉にみんなの視線がこちらに刺さる。
誠実そうな人が多いイメージだった。
「お、A、大丈夫か?」
初日から生徒を名前呼び捨てで呼ぶなんて、まぁまぁ馴れ馴れしい熱血タイプの先生だろう。
まぁ心配はしてくれたんだし、お礼に一礼。
「えーと、そこ、根岸の後ろ座って。あ、根岸っつってもわかんねえか。根岸手ぇあげて」
根岸、と呼ばれる生徒は、手を上げてこちらに手を振った。にこにこ、笑っている。男の子の後ろなんて…運が無さすぎる…
「A、あれあんた支えてくれた人だよ」
横腹をつつきながら澪ちゃんが教えてくれた。それだけ伝えると、一番前の席にそそくさと戻っていった。
ええ…澪ちゃん、行っちゃった…
でも今はHRであくまでも授業中。皆シーンと静まり返っている。根岸、って人にお礼を言うのは、休み時間くらいでいいだろう。そう思って後ろの席についた。
机の上に散らばったプリントや書類をそろえていると、根岸って人がメモを私に渡してきた。HR中なのに何やってるんだろう。くだらない。
恐る恐る中身をのぞくと、そこにはこう書かれていた。
「体大丈夫?」
丸い、女の子みたいな筆記体で小さく書かれていた。
ほんとに心配してくれてるのかな…なんか根岸って人は見た目がイケててちょっと怖いけど悪い人ではないかも、様子見ってところだ。
根岸くんのメモの端に、小さく「大丈夫です、お気遣いありがとうございます」と書いて肩に貼りつけた。
肩に感触を感じた根岸くんはメモを肩からペりっと剥がす。
「なんやねん、肩に貼るって笑」
と小さく呟いて咲くような笑顔をこちらに向けた。
その笑顔を見た瞬間に、この人はいい魔物だと、小さく電流が走った。
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飛燕 - 読ませていただきました!関東子の話すごく面白いし根岸くんの話もキュンキュンする場面が多くてシチュエーション想像しただけでもうたまらないです…!!!ぜひとも続き読んでみたいです! (2021年9月9日 7時) (レス) id: 96bccf4e47 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時:2021年1月10日 0時