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「兄のコンビ名、存じてます?」
「…パワージャングル」
「相方の名前」
「…森山くん」
「嘘でしょ…ほんとに知ってるんだ」
失礼なことのように思えるかもしれないけれど、本当に今まで兄のことを認知している人がいなかったのでとても驚いてしまいました。
それと同時に、安堵しました。
兄の存在は忘れられていない。少なくとも、三ノ輪さんの頭の隅の隅には兄がいるんだと。
嬉しくて、嬉しくて。涙がこぼれてしまいました。
「え!?どうしました関さん!!大丈夫?」
三ノ輪さんは驚きつつ、私の丸まった背中を優しくさすってくれました。とても優しい方でした。
「まだ芸歴も浅い妹のわたしが早くに売れてしまって…でも頑張ってる面白いお兄ちゃんは売れなくて…頑張り度合いと売れって比例しないんだなって」
嗚咽混じりに告白すると、優しい眼差しに変わって、昔のことを昨日の話のように話し始めました。
「自分語りに、なっちゃうかもしれないけど…私も最初売れなかったんです。なんか心配されちゃったし。でもあの番組で、ウケた。私にとってね、地上波にうつるなんてのは奇跡なんです。だから出させていただいたことだけで胸がいっぱい。しかもウケた。客席から笑いが起こった瞬間、私思ったんです。やっと時代がわたしに、追いついてきたって。」
最後のひとこと、面白めかしく言っていたけど、私にとってはとても救いになる言葉でした。
時代のせいにしちゃうなんてのは、批判されちゃうかもしれないけど、でもお兄ちゃん。あなたのツッコミに時代が追いついてないのかも。
私は常に”面白い”を追求し続ける兄の姿勢が大好きです。その背中を追いかけて、芸人になったくらいですから。
いや重いよ。
〜作者から〜
相方の名前、「土森」になっておりました。すみません。
土森ぃ!
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飛燕 - 読ませていただきました!関東子の話すごく面白いし根岸くんの話もキュンキュンする場面が多くてシチュエーション想像しただけでもうたまらないです…!!!ぜひとも続き読んでみたいです! (2021年9月9日 7時) (レス) id: 96bccf4e47 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時:2021年1月10日 0時