山吹37 ページ37
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「妾は、あの男を殺せばならぬ」
知っている声が、聞こえる。
まるで、母のあの優しい声を、幼い少女の声にしたような声だ。
「しかし、あの男にはもう女がおります。じきに、子供も生まれることでしょう」
続いて、誰かがその声に応えるように口を開いた。その声は震えていて、かなり年老いた男の声。
「殺せば良い。殺せば問題なかろう。もう少し経てば、妾の子が産まれる」
「ええ、仰せのままに。もう少し、お待ちください。"羽衣狐"様────」
はっと眼が覚める。
ゼーゼーと涙が溢れている。しかも体はびしょ濡れだ。どっと疲れが体を襲うような感覚があり、心臓は鼓動を早くしている。
────羽衣狐…………。
確か、ぬらりひょんが倒した京都の主の名前だ。最強と言われていた女の大妖怪。
でも、何故今この妖怪が夢に出てくるのだろう。
私はくしゃりと前髪を握る。何故か、この妙な夢がただの夢だとは思えなかったのだ。この胸のざわめきは、それを物語っているようにも感じた。
男、とは誰だろうか。
女がいる。それは、どのような意味だろうか。
一瞬ぬらりひょんかと思うが、それはないだろう。ぬらりひょんにはもうすでに息子がいるし、女もいた。
もしかしたら。
鯉伴のことでは、と汗がどっと流れた。
息子を殺せば、その血縁は絶たれる。子がいたとしても、女を殺せばまたその子供が生まれることもない。
すべてが、偶然だとは思えなかった。
確認した中では鯉伴にそんなそぶりはなかったが、あれだけで判別できたとは思えない。もしかしたら、もう居たのかもしれないし、これからできるのかもしれない。何より、憶測でものは言えない。
まずいことになった。私はまだ力不足で、協力者もいない。加えれば、帰ってきたばかりでまた出かけるのも気が引ける。しかも、私には自分の畏れを乗せて使える「武器」がない。
こんな状況で、羽衣狐と戦えるはずもないだろう。ぬらりひょんは噂によれば、妖しか切れない刀を使っていたと聞く。そんな珍しい刀を、私は持っていない。
カタカタと手が震えてならない。私は、どうすればいい。これでは、母との約束を守れない。
単純に時間がない。
私には、サボっている暇がない。眠っている暇もない。時間が、足りない。
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ヒエ(プロフ) - とても面白かったです、更新頑張ってください！ (2022年8月5日 17時) (
レス) id: b7b4b6a723 (このIDを非表示/違反報告)
とまと - いつの間にかお話いっぱい上がってる！続き楽しみにしてました！これからも頑張って！それにしてもこの小説をパクるなんて許せません！ (2019年8月8日 12時) (レス) id: 8582319c10 (このIDを非表示/違反報告)
寅丸号(プロフ) - れんれんさん» 私もできうる限り直す所存ですが、抜けるところもあるかと思います。具体的にどの話に誤字があったのか、お手数ですが教えて頂けると幸いです。 (2019年7月31日 18時) (レス) id: aa5f260623 (このIDを非表示/違反報告)
れんれん - 誤字多いよう…頑張ってください (2019年7月31日 10時) (レス) id: 489d6b69f0 (このIDを非表示/違反報告)
桜 - 続きが楽しみです！頑張ってください！ (2019年7月13日 22時) (レス) id: 193d98d6bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆらき x他1人 | 作者ホームページ：https://www.pixiv.net/users/43825162
作成日時：2019年6月5日 20時
