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山吹12 ページ12

突如聞かれた質問に、びくりと肩を跳ねらせた。

 Aは、震えている唇で、はっきりと「山吹と、申します」と答えた。


「山吹かい。では、山吹。お主は何故大妖山に居た?」


「畏れが、大きかったからです」


 それに、赤河童は興味深そうに「ほぉ?」と声を出す。


「わたくしは、貴方様にお会いしたく、ここに参上致しました」


 土下座にも似た形で、Aは深々と頭を下げる。


「わたくしは、強くなりとうございます。強くなり、母との約束を守りたいのです。ですが、今のままではわたくしは力不足なのです。ですから、今妖の中で噂の遠野一家にお訪ね致しました」


 それに、赤河童は少し怪訝そうな瞳を見せた。


「お主、妖怪であろう?」


 かなりの妖術の持ち主であるAは遠野には十分な人材だ。が、それほどの持ち主なら自分で技を磨けるだろうという意見もある。

 そんな意味を持って、赤河童はこちらを見つめるAを見据えた。

 それに、Aは更にきつく唇を震わせると、ふっと解けたように「はい」と声色を変えた。

 そして、悔しそうにこうも告げた。


「妖怪でもありますが……人間でも、あるのです」


 実に憎たらしい、と言いたげなその態度からの言葉に、赤河童は「それは……また」というなんとも言えない声しか出せなかった。


「ただでさえ、妖力もろくに扱えず、山の畏れに呑まれてしまうほど、貧弱かもしれません。ですが、お願いです。少しの間でいいんです。少し、畏れの扱い方を教えて頂ければ、それだけで……力がないよりは、ずっと、ずっといいんです……お願い、します……」


 固く、畳に指を押し付ける力が強まった。子供にしては、決心の付け方、覚悟が固く決まっているようだった。

 溢れ出す妖気に、Aは自覚していない。それは、時間が経つたびに膨大と威力を上げ、後ろにいる淡島は辛そうに顔を歪ませている。

 人間の血が入っているとは思えないほど、その妖力は大きい。申し分ない。そして、礼儀正しい口調に、硬い心。


(見込んだ甲斐が、あるかも知れぬな……)


 これが将来明るいなら、赤河童は喜んで「いい」と応えただろう。しかし、相手は子供と言えど「人間の血」が流れている。



 それがどのような血なのかは今は分からないが、それがもし、一家に危機を惑わせるものならば、考えなければならない。



 だが、それでもこの子供は捨てがたいのだ。

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ヒエ(プロフ) - とても面白かったです、更新頑張ってください! (2022年8月5日 17時) (レス) id: b7b4b6a723 (このIDを非表示/違反報告)
とまと - いつの間にかお話いっぱい上がってる!続き楽しみにしてました!これからも頑張って!それにしてもこの小説をパクるなんて許せません! (2019年8月8日 12時) (レス) id: 8582319c10 (このIDを非表示/違反報告)
寅丸号(プロフ) - れんれんさん» 私もできうる限り直す所存ですが、抜けるところもあるかと思います。具体的にどの話に誤字があったのか、お手数ですが教えて頂けると幸いです。 (2019年7月31日 18時) (レス) id: aa5f260623 (このIDを非表示/違反報告)
れんれん - 誤字多いよう…頑張ってください (2019年7月31日 10時) (レス) id: 489d6b69f0 (このIDを非表示/違反報告)
- 続きが楽しみです!頑張ってください! (2019年7月13日 22時) (レス) id: 193d98d6bf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆらき x他1人 | 作者ホームページ:https://www.pixiv.net/users/43825162  
作成日時:2019年6月5日 20時

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