52、共有は秘密 ページ4
真咲side
｢先生と話せましたか？｣
｢うん。おかげで未練は無いよ。
全部、きららちゃんの、おかげ｣
｢そんなこと…私は何もしてないですよ｣
優しく笑う彼女。
この笑顔に、どれだけ心を動かされただろう。
少女マンガみたいな出会いから今日まで
それほど長い時間は一緒に過ごせなかった。
それでも、この学校で関わってきた
どの女の子たちよりも濃い時間を過ごしたと思う。
この冬は、本当に少女マンガのような季節だった。
｢紅竜先輩、外国の大学に進学するんですよね？｣
｢うん。自分のやりたいこととか含めて、
ここじゃない場所へ行ってみたくて｣
｢紅竜先輩の未来が明るいことをずっと祈っています｣
｢俺も、きららちゃんの未来が
輝いていることを祈っているよ｣
見つめあって笑うのは、当分の間お預け。
きっと次に会う時は
お互い、手の届かないところにいるだろう。
｢きららちゃん、はい｣
｢なんですか？これ｣
彼女に渡した、小さな封筒。
｢俺の連絡先と、お守り｣
｢お守り？｣
｢みんなでお揃いのブレスレット。
これで、どこに行っても繋がってるよ｣
それぞれのネクタイカラーのブレスレット。
きららちゃんは、白色のものを選んだ。
俺から、みんなへの感謝の気持ち。
｢私まで、お揃いで良いんですか？｣
｢もちろん。
きららちゃんは俺たちの仲間の1人だよ｣
｢…ありがとうございます｣
嬉しいと困惑を浮かべた笑顔。
｢今度は、きららちゃんの番！｣
｢え？｣
｢アランのこと、好きなんでしょ？｣
さっきの笑顔から、困惑の表情。
少女マンガみたいな照れ笑いにならないところが
彼女らしいと思う反面、少し心残り。
｢もっと素直になりなよ。正直に生きなよ。
今と過去が違うように、未来も違う。
どう変わっていくかは自分次第だよ｣
｢…だから、わざわざ私だけ呼び出したんですか？｣
｢だって俺たち、秘密を共有した仲でしょ？
他のメンバーに知られたら、なんか、嫌じゃん｣
そう言うと、キョトンとした顔をしてから
彼女が笑った。
うん。1番、見たかった笑顔だ。
｢連絡先を教えたのも、今までのことも、
今抱えている気持ちも
俺たちの間で共有されたものは俺たちだけの秘密｣
｢…やっぱり、先輩には敵わないです｣
｢年の功かな？｣
なんて2人で笑った。
どうか、彼女の未来も今みたいな笑顔で溢れますように。
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