64、雪が舞う季節 ページ16
アランside
高校を卒業して、何回目だろうか。
｢えっ、もう、こんな時間！？｣
｢早くしないと遅れちゃう！｣
｢途中で、お腹鳴ったらどうしよう｣
｢鼓太郎、さっきまで食べてたよね？｣
｢大丈夫、俺、グミ持ってる｣
｢丈源、ナイス！｣
このメンバーで全速力で走るのは
たぶん、高校の体育祭で
部活対抗リレーをやったとき以来。
このメンバーが揃うと、高校での景色が蘇る。
大変だったこと、楽しかったこと、
頑張ったこと、好きだった…
｢セーフ！｣
｢ギリギリだね｣
｢今年も、一つずつ空席だね｣
｢ラジオ体操前に、全力疾走するって
順番おかしくない？｣
｢それが俺たちらしさでしょ｣
あれから毎年、このホールに来て、
ラジオ体操をしている。
絶対に、この日だけはオフ。
他に予定はいれない。
高校1年生のときからの決まり事。
お互いに抱く気持ちは、
高校の時から変わったと思う。
そんな中、絆は底知れず深まっていく。
｢今日は初めての3世代揃っての演奏会だってね｣
｢きららちゃんジュニア、可愛いすぎる｣
｢旦那さんはクラリネット奏者だっけ？｣
｢きららちゃんジュニアはピアノでしょ？
きっと、きららちゃんに似て天才なんだね｣
なんて、開演を待つ。
きららちゃんは、誰のことも選ばなかった。
高校生のきららちゃんが選んだのはピアノ。
ピアノを選んで、今は同じ楽団に旦那さんがいる。
可愛い娘さんにも恵まれて、
今も補聴器を通して、音楽の世界にいる。
初めてコンクールで最優秀賞を取ったときも、
恋人ができたことも、結婚することも、
子どもを授かったときも、
一番最初に連絡をしてくれたのは
風男塾メンバーのグループチャットで。
｢レディース＆ジェントルメン！！！
本日は私たちの演奏会へ、ようこそ！
今年最後の私たちの音楽をお楽しみください。
では、まず1曲目。ラジオ体操！｣
自分たちらしい『特別』
それが、これからも続いていく。
END.
終わり
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