聴きたくて、聞きたくなくて #2 (ページ14)

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62、聞きたくないページ14

｢期末…｣

｢ギリギリセーフ！｣

｢全員、赤点なしだったね｣

｢そんなことより、もうすぐ夏休み！｣

｢いぇーい！！！｣

そんな会話を聞きながら
早めに渡された夏休みの課題をする。

気が散るようになったら
補聴器の電源を切れば良い。

そう思いながら、切るに至らない。

ここの会話は雑音じゃない。

心地良いBGMだ。

｢吉良ちとせさん｣

そう思っていたのは、さっきまでの話で

｢はい？｣

課題の手を止めて、柚希くんを見上げる。

さっきまで好きに話していた1年生も
自然と静かになる。

この沈黙は、好きじゃない。

｢俺、君のことが好きです｣

聞きたくなかった言葉。

どうしたら良いか、わからない言葉。

｢えっと…｣

音になったのは、そんな言葉で。

｢夏休みが明けたら、答えを聞かせて欲しい｣

｢…どうして、夏休み明け、なんですか？｣

｢その間、俺はちとせに会わない。
会わない間に、考えて欲しい｣

そんなこと言われても…

私は…

｢えっ、先輩？｣

ぽろぽろと、溢れる雫。

涙だと理解するのは、すぐだった。

でも、どうして溢れるのか、わからない。

｢…わかりました、考えて、おきます｣

私は荷物をまとめて、部室を出た。

補聴器の電源を切って。