57、先手 ページ10
｢それは、それは…｣
師匠から、ここに来るまでのことを聞いた。
やはり今の巫女様は敵のよう…
早めにどうにかしなくては
女人村が崩壊する可能性がある。
そうならないためにも
早く、呪いの原因見つけないと…
｢織ちゃん、王宮って
いつも、こんな感じなの？｣
虎南さんが突然、そんなことを言い出した。
｢こんな感じとは？｣
｢なんだか呪いの場所が定まっていないというか、
呪いがウロウロと動いている気がして｣
虎南さんの言ったことを補足するように
きょもさんが答えた。
呪いが動く…？
基本的に呪いは、その場に留まる。
王宮内の呪いはすべて
私に集まっているはずだから
私が動かなければ、動くことは無い。
ということは呪いの発信源が動いている？
王宮内で動くなんて、人ぐらい…
｢きょもさん、呪いが動いているのは
王宮全体ですか？それとも特定の場所ですか？｣
｢門の近くは、それ程感じなかったけど
ここに近づくにつれて呪いが
よく動き回っている気がした｣
私の部屋近くとなれば、兵士たちは多くない。
ということは…
｢女官が呪いを持ち歩いている｣
｢私も同じ意見です、師匠｣
でも、どうやって呪いを持ち歩く？
まさか全員が呪いの札でも持ち歩いている？
それは、さすがに私じゃなくても
他の誰かが違和感を覚えるはず…
そうなると、身につけていても
誰も不審に思わないもの…
でも女官たちが装飾品を付けていたら
没収されるはず。
ということは見えないところに付けるもの？
そもそも、それを持ち歩いていて
呪いの症状が出た人たちに偏りがあるのは何故？
症状のある人、無い人の差は、何…？
｢世子嬪様！｣
いつも冷静沈着という言葉が似合う
まりるさんが慌てて部屋に入ってきた。
｢何かありましたか？｣
｢重臣たちが神の子を神の元へ帰せと
国民ともに騒いでいるそうなんです！｣
｢え？｣
何故こんなにも情報が広がっているの？
王様？世子様？まさか、アランさん？
それでも重臣たちだけじゃなくて、国民までなんて
噂の広がり方が異常に早すぎる…
｢…もしかして、巫女様が？｣
虎南さんがポツリと言った。
｢まさか、ここまでするの？｣
｢今の巫女様なら、ありえるでしょ｣
｢そんな…｣
先手を打って、
私の動きを封じようとしているのか…
あと少しで答えが見つかりそうなのに…
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