55、行き当たりばったり(きょも視点) ページ8
｢何故ですか！巫女様！｣
昼間、よーちゃんが巫女様に
声を荒らげたのを初めて見た。
まぁ、先代の巫女様は穏やかで
慈悲深いお方だったから
衝突するなんてことなかったんだけど
今の巫女様は私利私欲で動く人…
よーちゃんの怒る気持ちは痛いほど、わかる。
あれだけ可愛がっていた織ちゃんを
女人村は何もせず、見捨てると言うのだから
どんな理由があっても納得できない。
女人村は神の子を守る責務があるのに
今の巫女様は欲のため、責務を放棄しようとしている。
そんなこと許されるはずがない。
それでも女人村は巫女様の言うことに逆らえない。
逆らったら追放されるか、消されるか…
それでも、私たち三人は決めた。
織ちゃんを守ろうと。
早朝、私たちは村を抜け出した。
無断で外へ出てはいけないという掟を
生まれて初めて破った。
私たち三人が向かうは王宮。
織ちゃんのために動くなら
ちゃんと織ちゃんの声を聞かないと。
そう言ったのは虎南だった。
織ちゃんにとって
師匠は、よーちゃんだけなんだろうけど
私たちにとって織ちゃんは妹のような存在。
年齢的には娘かもしれないけど…
｢着いた…けど｣
｢どうやって中に入るの？
許可が無いと入れないよね？｣
早朝でも門の前には、ちゃんと兵士がいる。
不法侵入したなんてことになれば
織ちゃんに会うどころか
捕まってしまう。
どうしよう…
｢どうしたんですか？｣
突然、声をかけてきた兵士。
かなり若いように見えるけど…
｢織…世子嬪様に用があって来たのですが
どうしたら中に入れるのか、わからなくて…｣
と、兵士に言ったところで
どうすることもできないことは、わかってる。
でも今は少しの可能性に賭けるしかない。
｢では私の連れということで
中に入りましょうか｣
『えぇ！？！？！？』
そ、そんな簡単に？
兵士は、さっさと他の兵士に話を済ませると
中に入れてくれた。
｢世子嬪様の部屋へ案内したら良いんですよね？｣
｢お、、お願いします｣
本当に、本当に、大丈夫なのかな…？
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