97、世子嬪候補…(真咲視点) ページ50
母上の部屋に呼ばれた。
理由は、ただ一つ…
｢今、世子嬪にならないかと
声をかけている方がいます｣
やっぱり…
噂の通りだったか。
まぁ、さすがにこれ以上、
先延ばしにはできない話だし…
そろそろ腹を括らないとな。
｢どこの令嬢なのですか？｣
｢その方は他国の姫君です。
世子にとって良い後ろ盾となってくれるでしょう｣
｢え、他国の姫君って…
他国の者を世子嬪に据えるなんて
大丈夫なんですか？｣
｢彼女だけは特別です。
彼女以上に味方につけて心強い方はいません｣
てっきり、その辺の貴族の令嬢が
世子嬪になるんだと思ってたんだけど…
その国と同盟でも結びたいのだろうか？
でも、これでまた、王宮内が荒れそう…
王様のことを考えると
あまり荒立てたくないんだけど…
｢ですが姫君自身が良い返事をくれないのです。
なので近々、私と世子で姫君の元へ
行きたいのですが構いませんか？｣
｢…はい。私も一度は会っておきたいですし｣
｢そうですか。では早めに日程を組みましょう｣
…と、話がすんなり進んだ。
かなり後ろ盾を気にしていた母上が
気に入る姫君って、どんな人なんだろう…
姫君って言うからには
教養もしっかりしているだろうし
慈悲のある方だと思いたい。
｢んー…｣
そのことについて考えながら
母上の部屋を出ると、橙摩が待っていた。
｢世子様にご挨拶申し上げます｣
｢うん。どうした？｣
｢それが池で、こんなものを見つけたのですが
どの王族の方の物か、わからないんです｣
そう言って差し出された、女物の服。
かなり濡れていて、重たい。
王族の女物の服と言えば、
王妃様か咲のものだと思うけど…
｢っ…｣
それを広げて見たときだった。
一人の女の子が頭に浮かんだ。
咲にそっくりで、咲ではない子。
運動神経が良くて、
兵士たちよりも武術に優れていて、
そして、誰よりも優しかった。
｢織…｣
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