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93、月明かり ページ46
王宮の中にある、大きな池。
ここが、私の最期の場所。
｢またね、ちあき姉さん｣
｢次の人生も幸せであることを
私は、いつも願っているからね｣
｢私も、ちあき姉さんの幸せを願ってる｣
そして、私と出会った人たち、
出会っていない人たちも笑顔であって欲しい。
ワガママすぎるかな、こんなこと…
ううん。
最期ぐらい、ワガママでも許して欲しいな。
だって、神は私の親だもの。
親は、たまに子どものワガママをきくものだし。
これぐらいのワガママ、きいてくれるよね？
｢水、冷たくない？｣
｢大丈夫。この冷たさも、すぐなくなるから｣
｢…そうだね｣
少し冷たい池の水の真ん中まで歩く。
ちょうど、満月が写る場所。
私の膝の高さまで水がある。
そこで静かに目を閉じる。
王様、王妃様、王子様…
世子様…
どうか、お元気で…
不思議と、月明かりが温かくなる。
少しずつ、身体が軽くなって、光に溶けていく。
とても心地よくて、
とても切なかった。
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