花は咲き乱れて-外伝-(2) (ページ45)

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92、姉、そして母ページ45

｢織｣

どうにか涙を拭って外に出ると
すべての人が眠る世界で
よく知る人が両手を広げて待っていた。

私は、笑顔で、その胸に飛び込んだ。

｢そうだったね、私を育ててくれたのは
ちあき姉さんだったもんね｣

｢そうだよ。姉さんって言うよりは
母親みたいな位置だったけど｣

まだ神の元に居たとき、
姉さんと私を育ててくれていたのは
神ではなく、ちあき姉さんだった。

｢頑張ったね、織｣

｢そんなことないよ…
どれも、これも中途半端で、
まさか、こんなに泣くなんて思いもしなかった｣

ここで過ごした時間は
今の人生の中で、ほんの少しだけ。

ほとんど外国にいたし、その前は神の元にいた。

それらの時間に比べれば
王宮にいた時間は、一瞬だった。

それでも、とても、とても、尊い時間だった。

少しも落ち着かないし、
大変すぎる時間だったけど、
それでも、楽しかった。

幸せだった。

本当に、幸せだった。

｢それだけ、織には人の心があるってこと。
神の子として相応しいと思う｣

｢ダメだよ。神の子の割には
私も姉さんも、落ち着きが無さすぎる｣

｢…二人とも、そんなところが愛らしいんだよ｣

私は子どもの頃みたいに
ちあき姉さんと手を繋いで王宮の中を歩いた。

静かな世界の中、水の音がする方へ。