86、謀反(真咲視点) ページ39
「真咲!」
「王様」
その場にいた人たちが
健水くんに頭を下げた。
「矢が刺さったって聞いたけど大丈夫なん?」
「織の応急処置と
医務官の手当てで、なんとか」
少し、頭がフワフワするけど
今は、そんなこと言っていられない。
目を覚まして、それほど時間が経っていないのに
俺のことも含め、周りを気遣う織。
また頑張りすぎてしまわないか、
誰かのために、自分を犠牲にしないか…
心配で、心配で、堪らない。
国民を思う慈悲深さは
未来の王妃に必要なもので、良い心だと思う。
でも、それは自分自身にも使わなければ
意味が無いと思う。
国民や周りの人を大切に思う織は
本当に凄いし、尊敬する。
でも、それが彼女の犠牲の上で
成り立っていると知ったとき、
幸せなままでいられる人は、いるのだろうか?
少なくとも俺や、織を慕う人たちは
誰も幸せではいられないと思う。
それじゃあ、意味が無いんだ。
ただの見せかけの幸せになってしまうから…
「王様!世子様!世子嬪様!」
矢を放った奴らを捕え、アランが戻ってきた。
「これで全員か?」
「はい。世子嬪様の放った矢のおかげで
誰も逃げられなかったようです」
矢は、すべて急所を外していた。
「世子嬪を狙うことは
謀反の罪に問われることは知ってるな?」
「…」
誰も口を開こうとはしない。
きっと、死を覚悟してのこと。
そうでなければ、こんなこと、できない。
「王様、よろしいでしょうか?」
「なんや?」
「神の子である私を狙ったとしても
私は世子嬪で、怪我を負ったのは世子様です。
どんな理由であろうと
厳しく罰するべきでございます」
そう言う織の姿は苦しそうだった。
恐らく、知っている人なんだと思う。
「こいつらを牢へ入れておけ。
巫女たちと共に罰する」
『はい、王様』
とりあえずは一件落ちゃ、く…
「世子様?」
気が抜けたのか、毒が残っていたのか、
身体に力が入らなくなって
視界が真っ暗になった。
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