79、大切な人(真咲視点) ページ32
｢世子嬪様！｣
｢えりかさん！まりるさん！｣
真っ先に、織を気にかける二人は
織を心から大切に思っていて
織にとっても
甘えられる数少ない場所なんだと思う。
｢帰りが遅いので心配しましたよ｣
｢少し時間がかかってしまって｣
｢織！｣
俺以外に、世子嬪ではなく
織と名前で呼ぶ人もまた
織にとって大切な人。
｢師匠！｣
本当なら世子嬪を名前で呼ぶのは
不敬にあたるから罰せられるけど
飛びつくぐらい織が喜ぶのなら話は別。
｢頑張ったね、織｣
｢師匠たちがいたから頑張れました｣
｢本当に、強くなったね｣
｢ここほどでは無いですが、向こうでも、
いろいろ…あった、ので…｣
｢織？｣
安心したのか、
織は話しながら眠ってしまった。
まぁ、あれだけのことをしたんだ。
疲れていないはずがない。
子どものように眠る彼女を見て
少し微笑ましく思った。
…でも、
その様子を見て、世子嬪付きの女官や
師匠と呼ばれる人たちが慌てだした。
｢世子様！織は
どれだけ神力を使ったのですか！？｣
｢えっ…確か、亡くなった咲を呼び出して、
その後、国民の記憶を浄化するって
何十人もの国民を青い炎で燃やして…｣
師匠と呼ばれる人たちの顔が青ざめていくのが
例え雲がかかりだした夜でも、よくわかった。
｢えりか！まりる！すぐに織の部屋へ！｣
さっきまで安心感に溢れていた空気が
一気に冷たくなる。
ただ事じゃないことは、すぐに理解できた。
でも、何が、どう危険なのか、わからない。
それでも、今の自分にできることは
織を部屋まで運ぶこと。
織を抱きかかえ、部屋まで走った。
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