51、彼女の幸せ(真咲視点) ページ4
｢私はまだ、心から幸せだとは言えないでしょう｣
｢どうして？｣
｢世子様が心から笑っていらっしゃらないからです｣
それは予想もしていなかった言葉だった。
俺が、笑ってない？
まぁ確かに、そんなに笑顔を見せる機会は
無かったと思うけど…
｢世子様には想い人が、いらっしゃるのですよね？｣
｢え…？｣
｢初めてお会いした日、世子様は私を見て
別の方を見ておりました。
きっと、花嬪様を重ねていらっしゃった。
違いますか？｣
バレていた。
気づかないだろうと甘く見てた。
でも彼女は、そんなに馬鹿じゃない。
ちゃんと周りを見て
周りが何を見ているのか、
何を求めているのか、教えられなくてもわかる人。
俺は、無意識的にでも
彼女のことを傷つけていた。
彼女を守ると言いながら、守るどころか
一番、彼女を傷つけている。
｢世子様、申し訳ございません｣
｢なんで世子嬪が謝るの？
謝るべきは俺じゃん｣
｢いいえ。私の力不足です。
私は世子様の傷を抉るだけで
何も、できておりません…｣
｢そんなこと…
俺だって世子嬪を傷つけてばかりで…｣
｢私の傷など、あってないようなもの。
私の傷は全て、自分自身の責任です｣
｢そんなに自分を責めなくても…｣
｢…本当に世子様はお優しい方ですね｣
その笑顔が無理をしていることぐらい
俺にでも、わかった。
そんな笑顔、させちゃいけないのに
俺が気づいていないだけで
何度、無理に笑顔を作らせてしまっただろう？
彼女が俺の
心からの笑顔を見たいと言うなら
俺だって彼女の
心からの笑顔を見たい。
今更かもしれない。
でも、まだ俺たちは出会ったばかりで
お互いのことは無知に近い。
だとしたら、これから知れば良い。
まだ、たくさん時間はある。
だから…
｢世子様、世子嬪様｣
二人で話しているところに
健水くん付きの女官、カナエさんが来た。
｢お二人でいらっしゃるところ申し訳ないのですが
世子様、王様がお呼びです｣
健水くんが？
なんでだろう…
俺は世子嬪の手を離して
すぐに健水くんがいる執務室へ向かった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 5人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
