77、力(真咲視点) ページ30
これだけ兵士がいても、
やっぱり国民は誰も出てこないし
倒れている国民も目を覚ます気配が無い。
これも全部、織の力？
それとも、神の力？
｢王族が女人村に手を出すとは
この国に災いが起きるでしょう…｣
兵士たちに捕らえられても
織に向ける敵対心は変わらない。
｢それは、あなたが心配することではありません。
きちんと罪を償い、神に許しを乞いなさい｣
最後まで、巫女様と呼ばれる人は
織に対して好戦的なのに対し、
織は巫女様相手に動揺することなく、
毅然と振舞っていた。
｢これで全員、連行したか？｣
｢はい、王様｣
近くにいた兵士が答える。
｢では、国民を起こすとしましょう｣
織は、パンっ…と
一度だけ手を叩いた。
すると、さっきまでピクリとも動かなかった国民が
次々と目を覚まし、王様に気づくと頭を下げた。
何がどうなっているのか、国民は誰一人、
わかっていないようだった。
｢皆さん、夢遊病になっていたのですよ｣
織が国民に対して、そう言った。
｢夢遊病、ですか？｣
｢はい。女人村で悪事を働いた者がおり、
その代償が夢遊病となり、
皆さんに降り掛かってしまったのです｣
織は穏やかに、説明した。
｢ですが神の子である私が、きちんと浄化しました。
女人村が、いくら道を間違えても
必ず、私のように、神の子が間違いを正します。
もう大丈夫ですから、皆さん安心してください｣
織の言葉で国民が歓声を上げ、
誰もが織に礼を尽くした。
橙摩たちも一緒になって喜んだ。
やっと、織が国民に、
周りの人たちに認められたんだと安心した。
今まで、どちらかと言えば
良くない噂の方が色を濃くしていたけど
これからは大丈夫だろう。
もう、今までのような辛い思いはさせない。
俺は、そう、心に誓った。
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