72、代償 ページ25
｢あのー…｣
世子様と抱き合っているとき
申し訳なさそうに
雅さんが入ってきた。
｢え、もしかして、聞いてました？｣
｢いや、あの、はい…全員で…｣
｢全員！？！？！？｣
雅さんの後ろから、見知った顔が勢揃い…
｢世子様！
どうして教えてくれなかったんですか！｣
｢母さんの埋葬準備とかするのに
人を呼んでない訳ないでしょ｣
｢だからってー…っ｣
｢世子嬪様？｣
私の異変に気づいて、そう発したアランさん。
｢大丈夫…大丈夫です｣
｢どこが大丈夫なんだよ！｣
身体に力がは入らない上に
視界が歪んでいる。
頭が痛いわけでもない。
何か悪いものを食べた訳でもない。
だとしたら、さっきの
死者に自分の生の時間を与えたことの代償？
こんなに、キツいの？
今回、試しに使ってみたけど、
しょっちゅう使うと命もたないな…
｢織｣
｢少々、このままでいさせてくださいませ｣
世子様の胸に自分の頭を預けた。
そして、ゆっくり深呼吸をする。
慌てることはない。
ゆっくり、ゆっくり、落ち着いて。
こんなことで命は尽きない。
焦る必要なんて、何も無い。
大丈夫、大丈夫。
｢織？｣
｢もう大丈夫です。落ち着きました｣
少しの間、耐えたら落ち着いた。
この程度で済んで良かった。
まだ万全ではないけれど…
｢…とりあえず王宮に戻ろう。
戻り次第、医女の診察を受けるように｣
｢はい、世子様って、あの！！！｣
｢何？｣
｢さすがに恥ずかしいです！｣
いきなり抱きかかえられるとか…
さっきと言い、今と言い！！！
｢ちゃんと掴まっててね｣
いつもなら振り払えるのに
今は、それができない。
体調が悪いから？
それとも…
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 5人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
