70、双子 ページ23
私は夢を見ていた。
夢というか、
現実ではないけれど、
現実のところ。
死者になるか、生者になるかを選ぶ場所。
そこで私は待っていた。
｢織｣
そう声をかけられ、振り向くと
鏡を見ているのかと思うほど自分そっくりな人。
｢お久しぶりです｣
｢久しぶり。織。
昔みたいに、姉さんって呼んでくれないの？｣
｢…はぁ。姉さんは本当に、いつもいつも！｣
｢そう、怒らないでよ。
ここに来るまで忘れてたくせに｣
｢そういうしくみになっているのですから
しかたがないでしょう！？｣
人は死したとき、
何故、この生を選んだのかを思い出す。
私は、まだ生きているけれど
目の前に死があるからか、神の子だからか、
思い出した。
私は、この人生を選ぶ前、
咲という名の姉さんと
双子として、神の元に生まれた。
その時から神の子だったんだけど…
｢姉さんが世子様に恋したせいで、
神様が娘はやらん！みたいな精神で
世子様に大量に試練を与えるとか…｣
｢いやぁ…その試練から真咲を守り、
私が負けるという…｣
｢苦笑いで済む内容じゃないですからね？
結局、私が神様を宥めて、人として生を受けて
姉さんができなかったことを私がするという…
いつも、いつも姉さんの後始末ばっかり！！！｣
しっかりしているように見える姉さんと
落ち着きが無いで知られている私。
でも、ちゃんと周りを見て
未来を見据えて行動することが苦手な姉で
それをこなせる私。
双子なのに、得意不得意は真反対。
似ているのは見た目だけだと
神様も、よく頭を抱えていたっけ。
結果的に、しっかりしているのは私なんだよ！！！
｢ごめんね。いろいろ押し付けてしまって｣
この切なそうな横顔が本当に綺麗なんですよ。
コレ見たら、仕方ないなぁってなるんですよ！
ズルいわぁ。
｢織？｣
｢…別に嫌じゃないですよ。今の人生｣
｢どうして？｣
｢神の元では、こんなにたくさんの感情を
知ることは無かったでしょうから｣
愛されることが、こんなに幸せで
愛されるべき子どもが愛されずに苦しむ姿が
苦しくて、悲しくて
納得いかなくても、そうせざるを得ない現実に
虚しくなって、歯がゆくて…
｢この人生を選ばなければ、
これ程、精一杯、誰かに尽くそうとは
思わなかったと思います｣
｢…織も、真咲に恋をしたのね｣
｢やはり双子なので好みは同じみたいですね｣
久しぶりに、二人で笑い合った。
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