37、冬の夜 ページ38
冬休みに入り、
宿題はさっさと片付けて、
ピアノの練習に明け暮れた。
冬休みは家族3人で過ごせる貴重な時間。
｢明日はホール練習だよね？｣
｢明後日が本番だからね。
本当は、もっとホールに慣れてから
本番を迎えたかったんだけど、予定が合わなくて｣
楽団の人たちどころか、
パパとママが全員揃うことも
最近、少なくなってきたらしい。
それぞれが、演奏や顧問を依頼されるから。
決して、仲が悪くなったわけじゃない。
これが私たち家族の、楽団の当たり前。
｢明後日の本番、緊張してる？｣
｢んー、今までより緊張してる。
知ってる人が来るなんて家族以外、初めてだし｣
今まで、クラスメイトが来るなんて無かったし。
ピアノを弾くことはあっても
オーケストラで演奏する姿を
家族以外に見せるのは初めて。
変な緊張感がある。
｢全員、男の子というところが気になるが…｣
｢パパ。ただのクラスメイト｣
父親って、こんなものなのかな？
変に気にしてるというか、なんというか。
｢でも好きな子ぐらい、いるでしょ？｣
なんて、ママが言うから
｢そうなのか！？｣
｢友達としてならね｣
って、パパを宥めるのに苦労した。
一目惚れなら、したけど…
じゃあ、今の関係に不満があるかと聞かれれば
少しも無い。
ただただ、一目惚れしただけ。
それ以上でも、それ以下でもなかったみたい。
その程度のものを
恋心と言うのは、だんだん失礼な気がしてきた。
時の流れと共に気持ちが風化したみたい…
それに、あのメールから
葉崎くんとは、なんとなく気まずい。
メールどころか、教室で話すことすらないまま
冬休みに入ってしまった。
でも明後日、来るんだよね。
…余計なこと考えず、音楽に集中しよう。
考えたって、答えは出なさそうだし。
｢明日に備えて、楽譜さらってくる｣
｢早めに寝るんだよ｣
｢はーい｣
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