36、ママ ページ37
ママと歩く帰り道。
転校前に、パパとママと歩いた日以来。
手を繋いで歩くのは、今も変わらない。
補聴器を付けていても
やっぱり、私は音のある世界には慣れていなくて
聞き漏らしてしまうかもしれない音を
ママは、とても気にしている。
離れて暮らしている分、過保護だと思う。
でも、それが私の当たり前で
照れくさいけど、嬉しい気持ちの方が強い。
「ねぇ、ママ」
「なぁに?」
「ママは、彼らを見て、どう思った?」
「どうって?」
「優しそうだとか、そういうの」
「そうねぇ…」
って、考えてから
「Secret」
と笑って答えられて、拍子抜けした。
ママのことだから、あの子は〜、この子は〜って
ルンルンで答えてくれると思ったのに。
「ふーん…」
「でも、これだけは言える。
みんな良い子たちで、優しい子たち」
「…そっか」
どうやっても目立つ親子。
外国人の女性と手を繋ぐ補聴器を付けた子。
目立たないことの方が少ない。
特に日本では。
でも、それを恥じてたのは、昔々の話。
今は、世界中の人に、ママを自慢したい。
音楽家としても、母親としても、
すごい人なんだって。
大声で叫べるぐらい、私はママを尊敬してる。
10人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ