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35、余計 ページ36
凛空side
｢せっかくだから皆で行こうよ｣
｢真咲くんが行くなら俺も行くー！｣
｢何を着ていけば良いの？やっぱり、正装？｣
｢普段よりキレイめな格好で十分よ｣
何時に集合するか、
何を着ていくかで盛り上がる中、
俺は、グルグルする気持ちを
ぐっと飲み込もうとしていた。
お母さんがコンサートマスターで
お父さんが楽団の指揮者。
それを聞いたとき、
ものすごく心が痛くなって
泣いてしまいそうになった。
恐らく、きららちゃんの過去を知っているのは
俺だけ。
だから、ここで泣き出してしまえば
きららちゃんは話したくない過去を
お母さんの前で話さないといけなくなる。
きららちゃんが、どうして転校したのか、
その理由を親御さんが知っているのかどうか
俺も知らない。
だとしたら余計、
勘づかれるようなことはしたくない。
してはいけない。
音楽一家に生まれたのに、
その音を聞くことができない。
それが彼女にとって、どれだけ辛いことだろう。
どれだけ苦しくて、悔しいことだろう。
それを乗り越えたのか、
見せないようにしているかも、わからない。
それは、きららちゃんの努力で、
すごいことであって、
努力してはいけないところなのかもしれない。
恐らく、そんな判断をする時間なんて
なかったんだと思う。
だから余計なことは言わない。
いつも、一歩引いて周りを見ている。
求められれば同調して、
求められなければ気配を消す。
彼女が持つべき力だったのかな？
本当に、きららちゃんに必要なことだったのかな？
頑張りすぎだよ、きららちゃん…
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