聴きたくて、聞きたくなくて (ページ25)

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24、階段ページ25

24、階段

階段を上がって、下りて。

人目のつかないところで補聴器を付けて。

廊下を走るわけにはいかないから
なるべく早歩きで。

ちゃんと周りを見ないと
また怪我をしてしまうかもしれないから
ちゃんと辺りを見ながら。

そして、やっとたどり着いた
鍵のかかった屋上の扉の前。

｢きららちゃん…｣

｢結構、探したんですよ？｣

｢どうして？｣

｢なんとなくです｣

彼の隣に腰を下ろす。

｢授業、始まるよ？｣

｢それは私だけじゃないですよ｣

お互いに移動する気なし。

午後の授業、なんだったっけ？

まぁ、いいや。

1限抜けたところで、私の成績には
それほど響かないだろうし。

｢ずっと、好きだったんだけどな…｣

という言葉はチャイムの音よりも小さかった。

でも私には、はっきりと聞こえた。

私は聞こえなかったフリをして
本を開いた。

髪で隠れた補聴器の電源を切って
本の世界に入った。

今は、聞こえない方が良いと思った。

だって、補聴器の電源を切る直前、
声を押し殺して泣いていることに
気づいてしまったから。