聴きたくて、聞きたくなくて (ページ23)

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22、will ページ23

“ウィル、表情が明るくなった”

｢え？｣

“ピアノの音色も温かさが増した。
今の学校生活、楽しいみたいだね”

今の学校に転校するまでは
嘘で固められた時間ばかりで
思い返してみても、どれが真実だったのか
よくわからない。

でも、今は自分が感じていること
すべてが真実だと思える。

まだ転校して日が浅いけど
嘘で固められていると思ったことは
一度も無かった。

“今のウィルを見たら、ママも喜ぶよ”

｢そうかなぁ？｣

“そうだよ。ママはウィルのことを
世界で一番、愛しているんだから。
そうじゃなかったら、willって呼ばないよ”

パパと、ママだけは私のことを
〝ウィルヴィア〟と呼ぶ。

私の大切なミドルネーム。

｢will｣の意味は〝志〟

そして2人の言う志の意味は〝愛情〟

ちとせという名前も好きだけど
2人だけから呼ばれる〝ウィル〟という名前は
もっと特別。

周りにどう思われても、
両親は私を愛してくれて、
私も両親を愛している。

日本とは、少し感覚が違うかもしれないけれど。

私にとっては、これが普通。

例え、自分の耳だけで
両親の作る音楽が聞こえなくても
私は両親のたった一人の娘。

誰に対しても、胸を張って言える。

私は両親に愛されていて、
私も両親を愛していると。