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21、家族 ページ22
ピアノを触らない日は無い。
補聴器を使うようになってからは
例え、熱があっても、ピアノを弾く。
何度も、何度も、ピアノを弾く。
その度に音色が部屋中に響いて
自分だけの空間を作れる。
“ほら、今のところは優しく”
｢こんな感じ？｣
“そうそう。たんぽぽの綿毛が空を舞うように”
私の音楽の先生は他でもない両親だ。
ピアニストの母、そして指揮者の父。
私は音楽一家に生まれた
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私のことを、私の家族から知っている人は
私たち家族のことを哀れんだ。
世界で活躍するほどの両親から
その音楽を聞くことができない娘なんて
哀れむには最適だと思う。
それらの言葉で傷ついたのは私だけじゃない。
両親も同じだった。
だから会話も、ピアノも、厳しかった。
でも苦痛に感じたことは無い。
厳しかった分、たくさんの愛情をもらった。
今だって忙しいはずなのに、
日本との生活時間も合わないのに、
こうして私に合わせて
パパがテレビ電話をしてくれる。
私を1人で日本に置いておくのは心配だからと
寮のある私立中学に入ったけれど、
あんなことがあって…
だからと言って、
全国を飛び回る両親と暮らすとなると
教育環境が変わりすぎて良くない。
だから無理を言って、日本の家に今は一人暮らし。
お手伝いさんが来てくれるから
家事に困ることは、ほとんど無い。
どれもこれも、両親の愛があってこそ。
寂しさを感じることは無い。
両親を思い出せば、いつも心が温かくなる。
離れていても、両親からの愛情は
いつも、すぐ側にあった。
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