聴きたくて、聞きたくなくて (ページ13)

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12、ニックネームページ13

雅side

｢ちゃんと自己紹介しようか｣

また、真咲くんが声と手話で話した。

なんで手話ができるのかは知らないけど
真咲くんが手話で話してくれるおかげで
彼女の表情も、どこか柔らかく感じた。

｢せっかくなので、筆談にしませんか？
どんな漢字を書くのか知りたいです｣

彼女は声だけで、そう言った。

本当に聞こえてないの？と思うほど
イントネーションに変なところがない。

俺たちの中の普通に合わせるために
身につけた、彼女の普通。

俺にとって、彼女は年下だけど
そんなの少しも気にならないくらい尊敬する。

すごい人なんだと思う。

｢じゃあ、俺から｣

と、彼女が出した手帳に
それぞれフルネームを書いていく。

｢紅竜真咲さん、神那橙摩さん、偉舞喜雅さん、
柚希関汰さん、英城凛空さん、葉崎アランさん…
皆さん、素敵な名前ですね｣

わざわざ声に出して、
ちゃんと相手を見て、名前を呼んでくれた。

｢君の名前は、どんな字を書くの？｣

橙摩が聞くと
さらさらと、綺麗に名前を書いてくれた。

｢吉良ちとせ…珍しい苗字だね｣

｢同じ苗字の人と出会ったことないです｣

｢じゃあ、あだ名は、きららちゃんね！｣

って俺が言うと、彼女がびっくりしていた。

でも、

｢可愛いじゃん、きららちゃんって｣

真咲くんは褒めてくれたし

｢俺も呼ぶー！｣

橙摩も賛成してくれた。