9、大妃様(花嬪視点) ページ10
「お初にお目にかかります。大妃様」
「よく来たな、花嬪。顔を上げよ」
きっと大妃様の年齢は母と変わらない。
でも、母よりも老いて見える。
早くに夫である前王様を亡くされて
今は大妃として、この部屋にいる。
きっと心労もあるんだろうな…
「花嬪は私が選んだ側室だ。
何かあれば私を頼りなさい」
「ありがとうございます、大妃様」
「王妃とは会ったのか?」
「はい。先程、ご挨拶にうかがいました」
「そうか。王妃のことをちゃんと見ているのですよ。
花嬪が望めば、その座は花嬪のものになる」
…え?
私が望めば王妃になる…?
そんな簡単になれるもの?
いや、そんなこと、あってはならない…
「あ、あの、大妃様、それはどういう…」
「国母が月派では納得がいかない者が多いからな」
王妃様も偏見が酷いと言っていたけど
これは、あまりにも酷すぎる…
「どうせ、王妃には子ができぬ。
そのような月派を国母と呼ぶに相応しくないと
重臣たちの半分以上は思っている」
そんなに…
「ですが王妃様もお若いですし…」
「いや。歴代の月派の王妃に子はいない。
そういう呪いがあるのですよ。
花嬪が王妃にならなくとも世子の母は花嬪になる。
お世継ぎは早くに生まれた方が良い。
その心構え、心持ちをしていなさい」
そんな心構え…
あれほどお優しく、誰よりも王様を信じ、
愛しているのに、それを私のせいで
引き裂くかもしれないなんて…
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