46、私の仕事(さくら視点) ページ47
「花嬪がそのようなことを…」
「はい、大妃様。その後、札について
重臣たちが論じることが減りました」
「もっと大人しいかと思っていたが、
さすがは右賛成の娘か…」
私の仕事は花嬪様にお仕えすることと
そこで見聞きしたことを大妃様に報告すること。
それを条件に、今の地位がある。
他に頼るところも、帰るところすらない私。
大妃様に付くようになってから
怜さんと会える機会が減ってしまった。
恩人なのに…
「それで、本当に花嬪の子は王子なのか?」
「私にも、わかりません…
ですが花嬪様は絶対に王子だと…」
「そこまで言い切って、もし姫が生まれたとしても
すべて札のせいにする気か…
どこまで頭の回転が早い娘だ」
私も、そう思う。
この間の他言するなという発言も
何かしら理由があってのことだろうし…
いくら時間があったからと言って
体調の安定しない中で歴史書を読み尽くすことなど
誰でもできることじゃない。
それをやってしまう花嬪様は只者じゃない…
「それで花嬪の体調はどう?主治医はなんと?」
「はい。問題ないとお聞きしております」
嘘。
本当は貧血の症状が出ている花嬪様。
でも他言するなと言われた以上、
伝えるわけにはいかない。
今は大妃様よりも
花嬪様を敵に回す方が怖い。
お優しい方だということは
この半年以上の月日で身をもって知っている。
でも、まだ花嬪様のすべてを知ったわけじゃない。
甘く見ていると、どうなるかわからない。
今ここで、ヘマをするわけにはいかない。
私の今のご主人様は大妃様ではなく、花嬪様。
一番に尽くさなければならない人。
油断できない…
「今日は、もう下がりなさい。
何かあれば、報告するように」
「はい、大妃様」
大妃様の部屋を出て、花嬪様の部屋までの道のり。
思わず溢れた、ため息。
疲れていないと言えば嘘になるけど、
逃れられないこの場所で、耐えるしかない。
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