24、違い(花嬪視点) ページ25
自分のお腹の中に
自分のものとは別の命がある。
まだ、本人から
ここにいるよ!と言われた訳ではないけれど
何故だか、つい触れてしまう。
ここにいるんだ。
私の中に、私が守るべき命が。
「花嬪様」
王様が王妃様の元へ戻って
少ししてから真咲が部屋に入ってきた。
それも、複雑な顔をして。
「楽にして良いよ」
そう言うと真咲は私の前に座った。
でも座っただけで目も合わせないし、話さない。
痺れを切らして
「私に何か言うことないの?」
と聞くと渋々、
「お祝い申し上げます、花嬪様」
と心無い祝いの言葉を定型文のまま言われた。
この表情、態度は覚えがある。
それは私が側室になると聞いたときと同じ態度。
何が不満なのかは、わからないけれど
心から喜んでくれることは無さそうだなと思った。
「あまり嬉しそうではないわね」
「そんなことは…」
「そんなに私のことを心配してくれるの?
でも、そんなに心配しなくても私は大丈夫よ?」
そう言うと今までで一番、複雑な表情をした真咲。
「これで当分の間は王様との仲のことを
周りにいろいろ言われずに済む。
ほんの少しだけど肩の力が抜けたわ」
「そう、ですか…」
そう言っても表情は変わらない。
「…ねぇ、真咲」
「なんですか?」
「真咲はどうして私が側室になったときも
妊娠した今も、同じような顔をするの?」
「えっ…」
同じような顔をしていることは
自覚していたみたいね。
しかも、それを言われて戸惑っている。
私の知っている真咲は人の幸福を
一緒に喜べる、共感できる人だと思ってる。
それが私のことになると違う。
その違いが私には、わからなかった。
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