一雫 (ページ1)

今日:7 hit、昨日:12 hit、合計:6,133 hit

プロローグページ1

ほのかは憂鬱だった。

とうとう、この日が来てしまったと思えば思うほど
胸が苦しくなって、上手く呼吸ができなくなる。

だから、なるべく考えないように
何も感じないように、心に蓋をする。

そのせいで無表情が板についてしまった。

｢いってらっしゃい！｣

と玄関まで来てくれた母に
コクン…と頷いて家を出る。

今日から、高校一年の二学期が始まる。

初めて着る、こっちの高校の制服。

そう。彼女は転校してきたのだ。

今回は、大阪から東京の高校へ。

元々、引越しの多い家で
環境に慣れる間もなく、転校することもあった。

そんな彼女に友達と呼べる人がいない。

友達がいない理由。

それは引越しのせいだけではない。

もう一つの理由は“イジメ”だ。

161cmの身長に、腰まで伸びた長い黒髪。

とてもスタイルが良く、真面目で内気な性格。

性格と合わない見た目が変に目立ってしまい、
どこへ行ってもイジメの対象になってしまう。

女子からは無視され、
男子には人に言えないようなことまでされた。

そのせいで人と関わることを恐れるようになった。

イジメでできた傷は癒えることなく、
今も何の手当てもされず、そのままだ。

彼女は、それ以上、傷を深くしないために
ひたすら下を向いて歩いた。

少し長めの前髪が下を向くことで
上手く顔を隠してくれる。

彼女は女性専用車両に乗り、
男性を避けて、速く歩いた。

彼女のいる世界は、今日も闇に満ちている。