【magic and magic】 (ページ9)

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8. 治癒Ⅱ ページ9

自分の手をぼーっと眺めてみても、その手に少し意識を集中してみても、なにも起きない。

昨晩のあの緑色の光は一体なんだったのだろう。

岸に必死な顔で

"この力のことは絶対に口外するな"

と頼まれ、特に逆らう理由もなかったので従った。

×

それから1週間程たった晩。

この家に保護されてから一度も外に出たことはないし、岸に "闇の魔法使いがうろついていて危ないから出るな" と散々言われていたので、特に出たいとも思ったこともなかった。

しかし今、自分でも理由は分からないが、どうしても外の様子が気になって仕方がない。

この感覚は少し前、ロンドンで紫耀を見つけたときの感覚に似ていた。

あの日も衝動に近かった。

紫耀がいたあの場所に、呼ばれているような気がしたのだ。

外に出てはいけないと分かっていながらも、この衝動は抑えがたかった。

幸か不幸か、今晩岸は不在。

＿＿＿私はコートを雑に羽織り、外に出た。

×

ジンが倒れていた。

あの晩の岸と同じように、血だらけで。

いつからここにいたのか、降っている雪がうっすらジンの体に積もっている。

「ちょ、ちょっと！ジンさん！」

声をかけても反応はない。

急いで雪を払って脈を確認する。

うっすらだが、まだ脈はあった。

まだ血がダラダラと流れている。あの晩の岸とは違い止血もまだ済んでいないのだろう。

医者を呼んでいたら間に合わない。この世界の医者の呼び方も分からない。

岸との約束はもはや頭になかった。

治癒の方法を習ったわけではないが、なにかに突き動かされるように、本能的に両手をジンの胸の上に置く。

「お願い……生きて…」

私の両手から、緑色の淡い光が現れ、ジンの体を包んでいく。

みるみるうちに傷が治っていく。

自分でもどういう原理なのか分からないし、体力がやけに消耗される。

『オマエ……マグルじゃなかったのか……？』

ジンは目を覚ました。

『いや、これは魔法じゃないな………まさかオマエ！あの神話の、治癒の能力を持つマグルだって言うのか……？』

信じられないとでも言うように目を見開き、私を見つめる。

.

＿突然後ろから手を引かれた。

『おい！！！外出るなっつったろ！！！』

鬼のような血相の岸が怒鳴った。