2. 黄色い魔法使い ページ3
「だから！本当にいたの！魔法使いが！」
「ついに幻覚でもみたんじゃないか？」
「A、アナタの空想の魔法使いの話もいいけど、はやく明日の仕込みを手伝ってくれるかしら」
発車時間ギリギリのところで汽車に滑り込み、急いで帰ってきて両親に熱心に説明すれど、全く相手にしてもらえない。
「なんで分かってくれないの！本当に見たんだもん！黒ネコが杖を持った男に吸い寄せられたの！」
「手品かなんかだろう。それかオマエの妄想か。」
「パパひどい！信じてよ！」
「だって魔法なんてあるワケないじゃない。あんなのただの作り話だわ。」
「〜〜〜ッ！ママもひどいよ！」
魔法は空想だと決めつけ、私の話に耳を傾けてくれない。
そうだ、親友のマイなら信じてくれるかもしれない！彼女、少しオカルトちっくだし。
そうと決めたらコートを羽織って家を飛び出し、隣のお家のインターホンを鳴らす。
「A？突然どうしたの？…まあアンタはいつも突然だけど。」
「マイ！聞いて！私魔法使いに出会ったの！！」
「ハァ…それは良かったわね」
「え！？それだけ…！？」
「ええ。じゃあ私、忙しいからまた今度ね！」
結局玄関から先に通してくれることもなく、追い出されてしまった。
「……なんなのよ、みんなして。」
×
不思議な出会いから数日たった晩。
相変わらず魔法使いの存在は誰にも信じてもらえず、あの出来事は実は自分の妄想だったのではないかと己を疑う始末だ。
暖炉の炎を弱くして、ベッドに滑り込み布団を被る。
パン屋の朝は早い。
はやく眠ってしまおうと、強引に目を閉じる。
『ねえ………』
声が聞こえる気がする。
しかしこの部屋にいるのは自分だけのはずだし、扉が開いた音もしていない。
幻聴だろうか。それにしてはハッキリとしている。
『ねえってば！』
先程より大きくなった声に反射的に目を開けると、
ベッドの横に知らない男が、私の顔を覗き込むように立っていた。
「きゃっ！！え！？」
『ちょっと！うるさい！シィ！！』
黒い髪の毛に大きな瞳。
濃紺のコートに、鮮やかな黄色のマフラー。
そして右手には、杖が握られていた。
「………魔法使い…？」
『ご名答！』
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作者名：キラ | 作成日時：2019年10月29日 20時
