君に触れたい (ページ34)

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34、健水視点ページ34

健水｢それで…？｣

今は紫織についての話を聞いてる。

紫織は、たくさん泣いて疲れたのか
病室で静かに眠っている。

怜｢例え、お母さんと呼べなくても
一緒にいられるなら、それで良いと思ってた。
でも、あの、火事があって…｣

漏電による火事で家は全焼。

たまたま庭でヴィオレッタさんと
すごしていた紫織は助かった。

火事の知らせを受け、すぐに駆けつけた当主は
ヴィオレッタさんと紫織を
行方不明として、2人で生活させることにした。

優しい当主は紫織のために生活費などを
毎月、送ってくれた。

紫織にとって、
ヴィオレッタさんと2人で暮らせるのは、
とても幸せなことやった。

でもヴィオレッタさんは
紫織を当主に託した。

紫織が理由を聞いても教えてもらえず、最後まで
ヴィオレッタさんに〝お母さん〟とは言えなかった。

言ってしまえば、今までの関係が壊れてしまうから。

だから紫織は聞き分けの良い子を演じ続けた。

自分の気持ちや考えを周りに悟られないよう、
無理にでも笑顔を貼り付けるようになった。

エミ｢何もかもヴィオレッタさんとのために…｣

怜｢まだ子どもな紫織が幼いながらに考えた結末。
ただ抱きしめてあげることしかできなかった…｣

真咲｢だから、お母さんって…｣

知れば知るほど、心が痛む。

それほど大きなことを
たった一人で抱え込んでいた紫織。

健水｢いっぱい、頑張ってんな…｣

そっと紫織を撫でた。

今は笑顔に縛られず、眠っている。