君に触れたい (ページ32)

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32、健水視点ページ32

屋上へ行くと、
屋上の真ん中で座り込む紫織と
何故か、怜の姿があった。

エミ｢怜さん…｣

真咲｢何、してるんでしょう？｣

健水｢さぁ…でも少し様子を見よう｣

怜が振り返ったから
俺たちがおることは気づいてる。

紫織はずっと俯いてる。

怜は紫織の話を、うん、うんって聞きながら
紫織の背中をさすってる。

何を話してるんか、ここからはわからへん。

でも紫織は、ずっと何かを怜に話してる。

そしたら突然、

紫織｢Maman…Maman！！！｣

って紫織が叫んだ。

子どもみたいに泣いている紫織を
怜が優しく抱きしめてた。

空は陽が沈み、
微かに残る陽の光で空が暗くなりきらず
紫っぽい色に染まってた。

紫織は、その空に向かって、
何度も、何度も、
〝お母さん〟と叫んだ。

天国にいる本当のお母さんを精一杯、呼ぶ娘。

でも、もう二度と会うことはできない。

声を聴くことも、抱きしめることもできない。

それでも何度も、何度も、紫織は呼んだ。

陽が沈みきって、辺りが真っ暗になるまで。