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そう言って猫のぬいぐるみの前に立った。
大きな試合をするような顔でキリッ…と見つめると、隣で治は面白そうに笑っていた。

クレーンゲームはそんなに得意じゃない。
確率ゲーとも言われてる為、わざわざ運も良くない私がするなんてお金を捨てるようなものだ。


(治なら器用に全てやり遂げるけど、私には…)


『あっ!今、惜しかった…』
「……」


ガッシリ掴んだのに出口付近で落としてしまった。
落ち込むと共に腹が立ってきた。

またお金を入れて、次、次、次…。
治は隣で私をじーっと見ていたが、集中している私にそんなの目につかなかった。


『…あっ、ぁ……なんで、落とす…』

「ふふっ…」
『もう、笑わないっ!』

「あははっ、ごめんね。つい可愛くてっ、うふふ…」


瞬時に治を睨むとずっと前から笑うのを我慢していたのか、大声で笑われてしまった。
自分の愚かさに恥ずかしいけど、治が楽しく笑ってくれてちょっぴり嬉しかった。


「でも、妬けちゃうなぁ」
『?』


ふと、治は後ろからぎゅーっと抱きしめてきた。
大きい手が私の手を掴み、そのまま手を引っ張られて指先にキスをされた。


「Aの表情を動かすのは私だけでいいのに…」


治はそう言った。
いつもの嫉妬した時のようにどこか冷たい声で聞こえた。
…私はハッ!として直ぐに手を振り払った。


『…お金を持った手だからキスしない』
「うふふ、分かってるよ。それでもしたかったのだよ」

『だめ』

「…はぁーい」


強く言うと、手を引いてくれた。
そしてそのまま一緒にアームを動かした。
…後ろに治がいるおかげなのか、取れる気がして自信が湧いてきた。


「全く、こんな簡単なものにいくら賭けるつもりだい?」
『…取れないのが悪い』

「うーん、アームを引っ掛けるのだよ。そしたら取れるよ」


治とお話しながらアームの位置を決めて降ろした。
__無事に取れた。


『取れた!どう?』
「かわいいよ」

『でしょー?』


私は取れた猫をぎゅーっと抱きしめた。
__治と取ったぬいぐるみ。


(大切にしよう)


『えへへ…』
「……はぁ…嫉妬しちゃうなぁ…」


治は小さくそう呟いた。
気分のいい私にはその声は届かなかった。

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シグマ(プロフ) - 黒川かぐやさん» うふふふ、嬉しいです!ありがとうございます!まじ共依存しか勝たん★ (8月27日 20時) (レス) id: af73925dd3 (このIDを非表示/違反報告)
黒川かぐや(プロフ) - あの、好きです……えっと、その👉👈ほんとにこの関係が好きで、この作品沼すぎて、何回も見直しちゃってるくらいです……共依存しか勝たん🥺👊 (8月27日 18時) (レス) id: 5ae6456499 (このIDを非表示/違反報告)
シグマ(プロフ) - 橘スミレさん» ふふふ、ありがとうございます! (8月27日 3時) (レス) id: af73925dd3 (このIDを非表示/違反報告)
橘スミレ(プロフ) - これぞ共依存ですね。最高です。 (8月27日 0時) (レス) @page44 id: 4832f2335e (このIDを非表示/違反報告)
シグマ(プロフ) - 眠いちゃんさん» おおっ、いいところに気づくねぇ!(ありがとうございます!) (5月13日 19時) (レス) id: af73925dd3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:シグマ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/  
作成日時:2022年10月23日 19時

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