【文スト】才能なしの政略結婚 (ページ44)

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『こ、こんなの着れません！』

私はそう声を上げた。
手には真っ赤な綺麗なドレスがあり、白いフリルが少なく、動きやすいようにシンプルな柄だった。

「いいじゃない！着なさい！」
『出来ません！』

それは、エリス様と同じものだった。
メイドはメイド服しか着ない。
…エリス様と同じものなんて、着れるわけないのだ。

(私の家はそうだったんだけど…)

「着てくれないの？」
『うっ…』

エリス様は悲しそうにそう呟いた。
思わず目線を逸らすと、彼女は「ワタシと同じモノは着たくないのね…」と一段と悲しそうに呟いた。

『そんな訳じゃ！』
「なら、着てくれてもいいじゃない」

すかさずフォローを入れると、そう突っ込まれてしまった。
私は一旦呼吸を整えて、理解して貰えるように口を開けた。

『メイドはメイド服を着るからメイドなんです。
エリス様とお揃いだなんて恐れ多いです！』

(同じ服を着た者の行先は、死)

私のお姉様やお母様と同じ服を着た者は笑いものにされて、最悪首を斬られる。
"凡人と一緒"が嫌いなお母様の機嫌をずっと取っていなきゃならない。

「なら、どうしたら着てくれるの？」

エリスは聞き方を変えた。
思わず『えっ』と言葉が詰まると、彼女はもっと寄り添っては「お願い」と甘えるような声を出した。

「ワタシが脱げば、Aは着てくれるの？」
『そんな事しなくていいです！』

「じゃぁ何をしたらいいの？」
『…………何もしなくて大丈夫です』

「なら、着てくれるの？」

(エリス様、頭いい)

メイドの為にエリスが動く必要は無い。
これは、私の負けだ。

『着てきますね』

私がそう言うとエリス様は本当に嬉しそうに笑った。
その様子を一目見て、更衣室のカーテンを閉めた。

(…こんな綺麗な服、着ていいのかなぁ？)

なんて疑いつつ、傷が付かないように腕を通した。
こんな大きなワンピースは風が通り過ぎてめくれそうだ。

そんなことを思いつつ、ふと鏡を見ると姿が見えた。
＿仮面をつけた青い髪の私。

(服は可愛いなぁ)

私は自然と仮面に触れた。
この下は…やけどの傷。
＿＿この醜い部分は、誰にも見せたくない。。