【文スト】才能なしの政略結婚 (ページ20)

今日:22 hit、昨日:3 hit、合計:92,526 hit

20 ページ20

エリスは慣れた手つきで私の頭を撫でて下さった。
それに少し癒されながら深く深呼吸をして、顔を冷やした。

その間、森鴎外は机の上を見つめていた。

「何か食べていたのかい？」

「お菓子だよ。森さんも食べる？」
「嗚呼、1つ頂こうかな」

太宰治は流れるようにお菓子を渡し、森鴎外は受け取ったあと口に入れていた。
なんの疑いもなく、ふつうに。

(警戒しないんだ…まぁ市販だし)

「うん…美味しいじゃないか」
「だろう？で、今このお菓子を消化中なんだよ」

ふと、太宰治がそう言うと共に俯いている私の視界にお菓子が映った。
思わず受け取ると、顔を上げた。
視界には彼の顔は優しく、柔らかな雰囲気が漂っていた。

『…』

すると森鴎外は私とは反対側の机の傍に座り、小袋にある残りのお菓子をもう1つ食べていた。
その瞬間をじーっと見つめると、向こうは口を開けた。

「そういえば、名前を聞いていいかい？
ちゃんと自己紹介出来なかっただろう？」

彼はそう聞いてきた。
…あ、名前を言ってなかったな。

『あ、はい。私は須田Aです。
森様も太宰様もエリス様も理解しています。』

礼儀正しくそう言うと、また柔らかな雰囲気が漂った。
……あれ？

(柔らかいままだ…)

初めの時は一気に部屋の温度が下がったのに、今はなんともない。
内心驚きながらも、私は小袋を開けてたべた。
すると様子を見計らったエリスが私の腕をぎゅーっと掴んだ。

「A！気軽にエリスと呼んで？あと頂戴」
『そ、それは…できません。はい、あーん』

「「…」」

ﾊﾟｸｯ_

自然と手に持っているお菓子を口に入れると喜んでくれたようで、モグモグ食べてくれた。
逆側には太宰がため息をついていたが、見慣れた光景となってしまっているようだ。

「なるほど」
『？』

ふと、森鴎外はそう呟いた。
目線を向けると、にこっ_と笑っていた。

「確かに、これは面白い」
『！？』

(どこがっ…)

なんて思いつつ、4人でちゃんと食べ終えた。
3人共、どこか上機嫌になってくれたのか、部屋があたたかい。

(…すごくなんだか嬉しい…)

私は緊張していたが普通に笑うことが出来た。