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38、あの日… ページ39
咲子視点
私は翼が家に生まれた日に
この家に来た。
その時は幸せで満ち溢れていて
笑顔の絶えない家だった。
でも、翼が成長するにつれて
力を発揮していくにつれて家族が壊れていった。
父親は、その力を見る度に翼を褒め、喜び、
変な方向に愛情が傾き始めた。
愛娘が可愛くて仕方なかったのだと思う。
その姿を見る母親の姿は憎悪で満ちていた。
愛している人を取られてしまった、
そんな感じだったと思う。
翼への虐待はエスカレートしていき
翼は音を聞くだけで怯えてしまうほどだ。
父親は愛娘から目を離したくなかったのか
母親の知らない間に家中にカメラを付けた。
それが虐待を知るきっかけとなった。
その頃には思っていることを表情に出せない少女に
翼は変わっていた。
そして悪夢の日…
父親は母親をジワジワと刺し、追い詰めていた。
母親は部屋中を逃げ回り、
その度に壁や床が赤く染まった。
とうとう母親が動かなくなったとき
翼は、その恐ろしさを実感した。
翼は泣き叫び、
今までに無いほどの強い力でその家を燃やし、
父親は逃げきれず、そのまま亡くなった。
当時の私はチンチラで、翼に抱かれ、
そこから逃げた。
すぐに撫子さんが来てくれて全てを理解してくれた。
警察は父親の無理心中として処理した。
下手に騒げば、力のことがバレてしまう。
そうならないよう、撫子さんが手配してくれた。
そして翼を自分の養子に
翼はチンチラである私を人に変えた。
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