潔白な部屋にたひとり ページ34
「おや、リタイアをご所望で？」
うっそりと笑みを深めたパカさんの表情に、不気味に影がさす。
「その場合、失格とみなし──ゲノムタワー最下層にあります、『白の部屋』に強制収監いたします。他の皆様が1億ビューを達成するまで、ずっとひとり、4畳半の密室で延々待機となりますが」
パカさんが右手で指し示すと、教室の照明が消えて、スクリーンに映像が映り始めた。
鉄格子の嵌められた白い空間に、人がうずくまっている──これが、白の部屋か。
「過去、貴方がたと同じようにダダをこねた方です。彼はずっとこの部屋で、仲間のクリアを待っておりました。すでに彼らが失敗したことも、つゆ知らず──」
──来るはずもない迎えを、ずっと、ずぅーっと……
早送りで流れていく、人だったモノの劣化。
……合成かCGか、きっと本物ではないのだろうが、見ていて気持ちの良いものではない。
──けれど。けれど、この部屋では、ずっとひとりなのだ。
誰と関わることも、言葉を交わす必要もなく、ただ蹲って、一人でいられる。この場所ならば、孤独と寄り添える。それはきっと、私にとって──
「──おう。流石にちょっと、悪趣味じゃねェかい」
ぱちん、と視界が弾けたような感覚。
……いけない。完全に、思考がやばい方向にハマっていた。ここに来てからの私は、どこか可笑しい。
思考を意図的に切り替えると、見えていなかった周りがクリアになった。
いつの間に目覚めたのか、心配そうにこちらを見ていた逢川さんに軽く笑いかける。
気持ちをリセットしたところで、パカさんを押さえつけている3人──忍霧さん、駆堂さん、そして鬼ヶ崎さんに視線をやる。
……怖いもの知らずなのだろうか。
暴力がルール違反だと明言されている中、運営に危害を加えようとするなんて、新手の自 殺未遂か？
「──お望みならばご案内しますよ」
空気が、冷える。
パカさんの一言で、この場が僅かな空気の震えさえもを感じ取れるほどの、静謐さを纏った。
「ご遺体は運び出しましたが、部屋のリフォームは済んでおりません。まだ十分、『痕跡』が残っておりましょう」
──ひとつ忠告を。
「貴方がたは、速やかに理解すべきです。怪我や死亡、当然ございます。なにせリアル実況ですから。──現実世界に、リトライやセーブがあるとでも？」
──凍りついた空気の中、場違いにも、底抜けに明るい声がひとつ、上がった。
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kima(プロフ) - 海獣さん» コメントありがとうございます。続編はある程度書いてから投稿する予定なので、少し待たせてしまうことになると思いますが、読んでいただけると嬉しいです。 (2022年10月22日 13時) (
レス) id: 6fedac0470 (このIDを非表示/違反報告)
海獣(プロフ) - マジで最高でした！！続き楽しみに待ってます！！ (2022年10月21日 23時) (レス) @page42 id: b62edcffd1 (このIDを非表示/違反報告)
kima(プロフ) - なーさんさん» コメントありがとうございます。とても励みになります。更新ペースがすごく遅いですが、投稿をやめる予定はないので、気長に待っていただけると嬉しいです。 (2022年8月22日 1時) (レス) id: 6fedac0470 (このIDを非表示/違反報告)
なーさん(プロフ) - 個人的にめちゃくちゃ好みです！！更新頑張ってください！ (2022年8月21日 15時) (レス) id: 64a4afe500 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kima | 作成日時：2022年5月23日 9時
