孤独は夜に顔を出す ページ22
夜中、2時を回った頃。
どうにも目が冴えてしまって、私はそっと音を立てないように身体を起こし、立ち上がった。
ずっと横になっていたからか、平衡感覚が危うい。机に手をつきぐらつく身体を支える。
寝間着にしているTシャツとショートパンツの上にカーディガンを羽織って、サンダルを履く。そして、自室のドアを開いた。
「………静か、だ」
小さく落とした呟きが、妙に反響して聞こえた。
ここに来てからはいつも騒がしかったから、こうも静かだと違和感すら覚えてしまう。
「………ここに来る前まで、ひとりぼっちだったのにね」
溜息のようなそれは、空気に溶けていく。
今くらい、本音を言っても良いだろう。ここには誰もいない。それに──仮面を被るのは、面倒見の良い優しい少女をするのは、疲れてしまうから。
エレベーターに乗って、目的の階のボタンを押す。頭上から降るLEDの光が、眩しい。
軽快な電子音が鳴って止まったエレベーターから降りると、真っ白な廊下に出た。
初日にも見たけれど、まるで病院みたいだ。潔癖で人を寄せ付けない、そんな白。
記憶を頼りに一つのドアを開けると、そこはどこか雑然とした倉庫だった。当たりだ。
小綺麗に纏められた通路をすいすいと進み、もともと棚があったのだろう、不自然な隙間に座り込む。
うずくまって顔を伏せていると、不思議と息がしやすいような気がした。
「……っはは、こんなんだから、私は、」
クズなんだ。本当ならあんな眩しい人と関わってはいけないくらいの、どうしようもないクズなんだ。
一人の方が楽で、どんな人といたって息苦しくて、そんな感情に蓋をして、さも楽しいですよって顔をして、優しい人たちの中に溶け込む。
そんなの───人でなしじゃなくて、何だって言うんだ。
不意に、頭上に影が差した。
緩慢な動作で顔を上げて、その人にゆるりと笑いかける。
「こんばんは、パカさん。───良い、夜ですね」
あなたには顔がないから、運営として個人の感情を表に出さないから──あなたの側は、息ができる。
何も変わらないアルパカの着ぐるみが、うっそりと、どこか寂しそうに、わらった気がした。
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kima(プロフ) - 海獣さん» コメントありがとうございます。続編はある程度書いてから投稿する予定なので、少し待たせてしまうことになると思いますが、読んでいただけると嬉しいです。 (2022年10月22日 13時) (
レス) id: 6fedac0470 (このIDを非表示/違反報告)
海獣(プロフ) - マジで最高でした！！続き楽しみに待ってます！！ (2022年10月21日 23時) (レス) @page42 id: b62edcffd1 (このIDを非表示/違反報告)
kima(プロフ) - なーさんさん» コメントありがとうございます。とても励みになります。更新ペースがすごく遅いですが、投稿をやめる予定はないので、気長に待っていただけると嬉しいです。 (2022年8月22日 1時) (レス) id: 6fedac0470 (このIDを非表示/違反報告)
なーさん(プロフ) - 個人的にめちゃくちゃ好みです！！更新頑張ってください！ (2022年8月21日 15時) (レス) id: 64a4afe500 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kima | 作成日時：2022年5月23日 9時
