とある実況者の隠しごと【ナカノヒトゲノム】

信用も信頼もご自分で ページ16

私がする"予測"は、データに基づいている。

　AIと対戦する中で指し筋を、癖を読み取り、次の対戦ではそれらに基づき最後の盤面を当てる。
　ノベルゲームのシナリオは、その作家が好む小説、ゲームなどから傾向を、あらすじからそのストーリーの方向性を掴み、最後の結末を当てる。

　『脳内ブラックボックスかよ』だのなんだのと言われているが、ちゃんと私の中で理論は完成しているのだ。
　一回実況中に説明しても、わけわからんと言われたが。

　なので多分、ここで得た情報をもとに予測をすることは不可能ではない……が、



「危険、ではないでしょうか」
「ふむ。理由を聞かせてもらおうか」
「言い方は悪いですが、その……全員が味方とは、限らないのではないか、と」


　つまり、内通者。

　失礼ながら、この中にそれがいる可能性だって否めないのだ。本当に失礼ながら。
　もちろん私だって例外ではない。いや、内通者なんかではないけれど、周りから見たらそうではないということで。


「ですので、私を信用しすぎるのも少し危ないですよ」
「自分で言っちゃうんだにゃー……」


　呆れたように笑う路々森さんに、まあ、と曖昧に返事をする。
　ここで生活を共にする以上、信用も信頼もしてほしいとは思うが、強制はできない。それに、こんな状況なのだから、警戒はすべきだ。


「ふむ。まあ内通者云々は置いておいて、今日はもう休まないか？色々あって疲れただろうし」
「そうですね。この先の方針はまた明日、ということで」
「そうだな。じゃあ、また明日」


　そろそろ疲れが溜まってきたところなのでありがたい。もとより私は体力というものに縁がないのだ。

　それじゃあ各自の部屋があるフロアに、と立ち上がり、エレベーターの方に向かおう……と、したのだが。


「あ、逢川さん、起きてください……！」
「……ん、ぐぅ」
「寝ないで！？」


　……逢川さんの保護者というポジションに固定されつつあるのは、勘違いだと信じたい。

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