とある実況者の隠しごと【ナカノヒトゲノム】

側から見てもこれは餌付け ページ14

つやつやの白米に、椎茸と豆腐と油揚げの味噌汁、ほうれん草とチーズの卵焼き、そして、ロールキャベツ。
　
　食堂のテーブルに人数分のそれらを並べると、なんというか圧巻だった。
　一人暮らしなんてものをしていると、こんなにしっかり作ることは少ない。自分のために料理をするのが面倒なのだ。


「出来上がったな。……じゃあ、皆さん手を合わせてください、いただきます！」
「いただきます」
「この小学校の給食感は一体」


　箸で一口サイズに切り取って、断面にチーズが伸びる卵焼きを口に運ぶ。うん、美味しい。これはもう卵焼きのプロと言って良いのでは？


「この卵焼き、すごく美味しいにゃー！中に入ってるのは、ほうれん草とチーズかい？」
「はい。最近凝ってまして」
「うんうん。ヒナヒナは料理上手だな。良いお嫁さんになれると思うぜ？」
「一人暮らしなので慣れてるだけですよ」


　本当に、料理の基本がある程度できる人なら、慣れてしまえばこのくらいできると思う。

　……それにしても、この味噌汁はどうやって作ったんだろうか。蛍光色のワカメっぽいものが浮いている。
　多分路々森さんだろうな。わちゃわちゃしながら料理しているのを隣でロールキャベツをぐつぐつしながら見た。


「……逢川さん、起きてください。ご飯、冷めちゃいますよ？」
「……すー、すぴー」
「わあ熟睡ですね。はい口開けてくださーい」
「すや、すう……むぐ……」


　寝ていらっしゃる逢川さんの口元を、小さめに切り取ったロールキャベツでつつく。すると、わずかに口が開いて、むぐむぐと咀嚼を始めた。
　そのまま食べてくれそうだったので、自分も食べながら逢川さんの口に放り込んでいく。


「ヒナヒナは親鳥だったのかにゃ？？」
「勘違いですね、初対面です」
「うーん、マキマキが甘え上手なのか、ヒナヒナが世話焼きなのか」


　前者だと思います。自慢じゃないが、私は人と接するのがあまり得意ではないし、一人っ子である。
　それに、逢川さんも甘えているというか、本能で行動したその結果がたまたま甘える感じになっているだけというか。

　そして、みんなの皿が空になったころ。
　さて、と路々森さんが声を上げた。視線が集まる。



「──ボク、なんとなくヒナヒナの実況者名に覚えがあるにゃー」


　
　

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