＊にーい＊ ページ4
廃病院の中は、外見よりも廃れてはいなかった。
「…暗いな、ここ。」
一応持っていた懐中電灯で地を照らしてやると、淡く揺らめくものが視界に入った。
ただそれは、次の瞬間に。
「ッ！！？」
ふっと消えたのだった。
何か背筋に寒気を覚えたAは、一度外に出ようと試みた
が。
「っ、嘘。開かない！？なんで！？」
ガチャガチャとノブを回すも一向に開く気配のない扉からは、鍵が消えていた。
鍵の存在そのものが、見当たらない。
「嘘だ…嘘だ嘘だ嘘だ。」
「嘘じゃないよ？」
不意に後ろから聞こえた声に、Aはビクリと肩を跳ねさせた。
「本庄A。君は約束を果たしに来たんだろう？」
低くしゃがれた、老爺を連想させる声はそう言った。
「約束、って…。」
「その前にまず…
こっち向きなよ。」
最後の一言は、直接脳内に突き刺さるかのように響いた。
Aは一呼吸置き、一気に振り返って……
「…あ、れ？」
なんの人影もないことに気づく。
「こっちこっち。」
「……………？ あ。」
声だけを頼りに視線を動かしていると、１つの縫いぐるみが目に留まった。
それは何かわからない程にくたびれ、廃れていた。
長く垂れた尻尾と、ピンと立ち上がった耳が辛うじてそれを猫だと伝えていた。
「うん、そう。
よく気づいたね。」
「…約束、って何？」
「自己紹介もないのか。まあいいや。
ようこそ、こんなに廃れた廃墟へ。
ここは僕達の城。孤独な亡霊が集まる所。」
饒舌に語り始める縫いぐるみに恐怖を覚え、一歩下がるA
「怯えなくていい。
どうせ君はいつか。約束を果たしに来なければならなかったんだから。
さあ。その扉を開け。足を踏み入れろ。」
えらく命令口調になった縫いぐるみから逃げるように。
Aは本館へと繋がる扉を開けた。
＊＊
早くも評価ありがとうございます。
吃驚しました。
これからも宜しくお願い致します。
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海葉(プロフ) - るめさん» ありがとうございます！ 頑張ります！(^ω^Ξ^ω^) (2015年7月8日 21時) (
レス) id: 3051c06970 (このIDを非表示/違反報告)
るめ - こういう系大好きですっ！ 更新頑張ってください！！！ (2015年7月5日 20時) (レス) id: 4da09b781e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：茶黒猫 | 作成日時：2015年5月21日 20時
