ムラサキ__《N.Ren》 (ページ8)

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ムラサキ__8 ページ8

俺はその後も屋上で、突然起きた不思議な出来事を思い返しながら寝転がっていた。

俺が屋上から降りた頃には、もう授業は終わっていた。

今日も派手にサボってしもうたな、なんて思いながら
下駄箱で靴を履いて帰ろうとした時だった。

「あ、サボり魔あ～！！！」

後ろから聞こえるハスキーな声。

「……紫耀。うっさいわ。」

「だって事実やん！(笑)」

俺が学校で唯一親しくしている人間、平野紫耀。
常に無気力な俺にもずーっと飽きずに話しかけてくる、なんとも変わった幼馴染。

「……今日は色々あったんやって」

「色々って？」

紫耀と学校を出て、歩いて帰る。家が近くしばらく一緒の道を帰るため、このまま質問攻めに合うのもめんどくさい。

「……お前、綾瀬川って知ってる？」

とりあえず、俺は事の内容は話さず、Aのことを聞いてみた。紫耀は俺と違って常に明るく人に囲まれているので、何か知ってるのではないかと思ったからだ。

俺の質問に、紫耀は目を丸くして

「綾瀬川さんって、俺らの学年におる綾瀬川さんよな？知っとるに決まってるやん！」

と、至極当たり前のように言う。
……俺は知らんかったんやけどな！！！！

「苗字も珍しいし、ガチもんのお嬢様で更にめっちゃくちゃ美人！俺らの学年の有名人やん！なに、廉、綾瀬川さんと何かあったん！？」

やはり、政略結婚というだけあって本物のお嬢様なのか。

「いや、別に何かあった訳では…強いていえば、存在を知ったというか、知り合ったというか…」

紫耀のことを信頼していない訳では無いが、そもそも人にしてよさそうな内容でもないため、適当に言葉を濁した。

「知り合った？え、なんで！？どこで！？あ、でもあの子彼氏おるで！残念やったな！！」

「いや、別に好きとかちゃうわ。彼氏おるの知ってるし」

まくし立てる紫耀に、俺は突っ込む。
その彼氏が、色々と訳ありなんだけどな。

Aの彼氏のキスシーンが俺の頭に浮かんできて、心がザラっとした。