ムラサキ__《N.Ren》 (ページ46)

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ムラサキ__46 ページ46

神宮寺side

「私、永瀬くんが好き」

その言葉は、俺が1番聞きたくない言葉だった。
頭を強く打ったような衝撃。

目の前が真っ暗になって、
力が入らなくなって、膝から崩れ落ちた。

もう無理なんだって、その時ようやく分かった。

だって、その時のAの目が
俺の嫌いな、永瀬廉のあの目と
全く同じだったから。

真っ直ぐで揺るがない意志を持った、あの目と。

俺は道を間違えた。
自分の未熟さを知った。
あの時浮気なんてしていなければ
今頃、俺は幸せに笑っていたかもしれないのに。

気持ちを決めなければならない時が
来ているのが分かった。

俺はAの方を見た。

「…絶対、また俺は迎えに行くから」

ここで終わりなんかじゃないって、
そう言い聞かせて。

「絶対、次こそAを幸せにするから、」

でも、その次がきっと無いんだろうなってことも、
本当は分かっていた。

「………今は、別れよう、」

今は、を付けたのは
俺の最後のプライドだった。

俺から別れを告げたのは、
振られる方が更に傷つくから。

こうして、俺たちの関係は終わりを告げた。

Aの両親には、
俺は未熟だからAには相応しくない、
と伝え、結婚をなかったことにしてもらった。

相当しぶられたが、俺の我儘を通した。

我儘の使い方を変えていれば、
Aを自分のものに出来たかもしれない。

だけど、
Aのことが本当に好きだと改めて思ったからこそ、
それは出来なかった。

Aが悪者にならないように配慮したのは、
俺の、Aへの最後のプレゼントだった。

そうして俺は成長する為に、
1人で海外へと旅立った。